第6話

 私はたばこ屋の角にある看板にこんな文章が書かれていることに気づいた。

『教室にちょうちょが入ってきたときがあります。先生が「あ、アゲハチョウだ」というと、男子が「え、アベハチョウ?」とふざけました。みんなは「阿部がちょうちょになった」「生まれかわった」とかいってくすくす笑った。私は汗をかきました。冗談でも死んだ人のことをそんなふうに言っていいんだろうか、と思うのと同時に、阿部さんがアゲハチョウを飼うのが得意だったことをみんなは知っているのかなと思いました。

 阿部さんの家には花びんがあり、下には新聞紙がしかれていました。花ではなくただの葉っぱがささっていたので、私はちょっと変だなと思いました。すると阿部さんは

「これ、アゲハチョウだよ」

と教えてくれました。よく見ると葉っぱには緑色の虫がのっていました。それから阿部さんは

「いまから君をつっつきにいくぞ」と言いながら青虫をつっつきました。青虫はオレンジの角を出しました』

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