第2話
私と阿部さんはそんなに仲がいいわけではなかったと思う。私より阿部さんと仲が良さそうな人はいっぱいいた。私は一番ではなかった。それに私が阿部さんと遊ぶようになったのは修学旅行の後からだから、阿部さんと私が友達でいた期間は実際すごく短いのだ。クラスを代表して、私が先生といっしょに阿部さんの家に行くことになったとき、私はそのことに引け目を感じていた。
「あんまり大勢でおしかけると悪いから」
と先生は言った。
私が選ばれたのはたぶん、阿部さんへの手紙を一番長く書いていたからだと思う。
阿部さんのお母さんは、
「部屋なんかそのままにしてあってね、どこか遠くに出かけてるだけなんじゃないかみたいな気持ちになることもあるんですよ」
とにこにこしながら語った。
クラスのみんなで書いた阿部さんへの手紙をわたすと、中身を少しも見ずに
「ありがとうございます。じゃあこれはちゃんとお供えしておきますね」
と言って仏壇に置いた。
看板の文章は間違いなく私の作文だった。交番の前にかかっている
『今週の交通事故 死亡1』
を見たとき、阿部さんが数字としてカウントされているんだと思うとびっくりして背中を汗がつたったけど、あの看板を見たときはそれよりもびっくりした。
もともとの作文はこう続く。
『私の一番の思い出は友達ができてうれしかったことでした。これからも仲よくしていきたいと思っていました。阿部さんが亡くなってとても悲しいです。もし悪いことをしたら天国からしかってください。』
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