第9話 ☆☆ジネット☆☆
「では、わたしたちはお料理をプレゼントしますね」
ミリィさんがこっそりと陽だまり亭へ訪れ、ヤシロさんの目を盗むようにわたしを呼び出しました。
庭に出てみれば、ノーマさんに呼び出されたロレッタさん、デリアさんに呼び出されたマグダさんがいました。
そして、そこでクリスマスの素敵なサプライズ計画の概要を聞かせてもらったのです。
ふふ。
ミリィさんらしい、可愛らしい計画でした。
「じねっとさんたちは、普段どぉり、ってこと、だね?」
「はい。その方がいいかと思います」
「そうさね。この三人がこそこそしてりゃ、さすがにヤシロが何か勘付くだろうしね」
「特にロレッタが尻尾出すだろうな」
「なんでですか、デリアさん!? あたし、尻尾なんか出さないですよ!」
「……と言っている声が大きい。ロレッタには隠し事は不可能」
「はぅ!? こ、これは……ついうっかり、です」
「その『うっかり』が怖いんさよ……」
ノーマさんの言葉に「はうぅ……!」ともだえるロレッタさんが可愛らしくて、思わず笑ってしまいました。ごめんなさいです。ふふ。
「シスターは教会の子供らの分と一緒にヤシロの分もプレゼントを渡すって言ってたんだよなぁ」
「シスターにとってはヤシロさんも『子供たち』の一人ですから」
ちょうど、今朝その件でシスターに呼び出されていたんです。
ヤシロさんへのプレゼントは何がいいでしょうかと。
ヤシロさんなら、どんなものでも喜んでくださると思いますが、二人で何がいいかと頭を悩ませてきました。
結局、防寒具がいいのではないかという結論にたどり着き、シスターは何かしら編み物をするとおっしゃっていました。
わたしは耳当てをプレゼントすることにしようと思います。
……い、いえ。
お食事は同じ職場の者としてのプレゼントで、耳当ては……その…………日頃の感謝ということで、……個人的に………………ふ、深い意味はないんですけどね!
「あ、でもあたし、きっとお料理以外で別にもう一つプレゼントすることになるです」
「なんだよ、ロレッタ。一人だけいっぱいプレゼントして目立とうとしてんのか?」
「違うですよ。ウチの弟妹がお兄ちゃんにプレゼントしたいって言ってるです。けど、あの子たち全員から一個ずつもらうとお兄ちゃんの部屋埋め尽くされちゃうですから『ヒューイット姉弟から』ということでプレゼントを贈ることにしたです」
「それは素敵なことですね」
「……マグダも、個人的にプレゼントがある」
「マグダもかぃね?」
「……マグダはいっぱいプレゼントをあげて目立ちたいと思っている」
「あんたは正直で清々しいさね……で、何をあげる気なんだい?」
「……首にリボンを巻いて『プレゼントはワ・タ・シ☆』と――」
「その発想は今すぐ封印するさね! 手遅れになっても知らないさよ!?」
「そういや、マグダって結構こういうヤツだよな? そーゆー時、あんま名前挙がんないけど」
「マグダっちょはキャラで得してるです」
「まぐだちゃん、かわぃい、から、ね」
こそこそと、お店の陰で女の子たちだけの秘密の相談。
そんな会合がなんだかくすぐったくて、わたしはいつも以上ににこにこしていたと思います。
「では、わたしたちはお料理を担当して、プレゼントは個別で渡すことにしますね」
「そうしてもらった方がいいだろうね。ヤシロは勘が鋭いからねぇ」
「プレゼント計画には参加出来ませんが、その分、クリスマス当日は盛り上げるとお約束します」
腕によりをかけてクリスマスディナーを作ると、わたしとマグダさんとロレッタさんはミリィさんたちに誓いました。
美味しいご飯と楽しい時間は、一緒だと幸せが倍増しますから。
「それじゃあ、このことは、ないしょ、ね?」
「はい」
「ぬかるんじゃないさよ」
「……任せておくといい」
「気を付けろよ、特にロレッタ」
「名指しやめてです、デリアさん!?」
そうして、女の子だけの秘密の計画は動き出し――クリスマスがやって来ました。
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