お空を飛ぶ

丸 子

おそらをとぶ

風の強い日でした。朝からニュースでは天気予報が繰り返し流れています。

「風が吹いてるね」

「飛ばされないようにしましょうね」

まいちゃんはお母さんとそんな会話をしています。

窓の外を見ると、洗濯物も飛ばされてしまいそうに強くはためいています。

「あー、ビュービューだねぇ」

「北風小僧さんですかねぇ」

天気予報では「春の嵐」と言っています。

「さて、では朝のしたくも済んだので、お散歩に行きますか」

「そうしましょうか」

靴を履いて玄関の扉を開けるとき

「さぁ、行きますよ〜! 準備はいいですか? 開けますよ〜〜 。 はいっ!」

お母さんと まいちゃんは目をぎゅっとつむって強い風に備えました。

「あれあれ、風は吹いてないですねぇ」

「あれ、本当だねぇ」

こわいながらも少しだけわくわくしていた二人はちょっぴりがっかりしました。

「なーんだ。でも良い天気だし、まぁ、いっか」

「まぁ、いっかぁ」

「行きましょう」

「行きましょう」

玄関の鍵を閉めて、お庭を通って、門を出ると、さぁ お散歩のはじまりはじまり。二人はいつものとおり手をつないで歩きだしました。外は暖かくて春の香りがして、とても良い気持ちです。

大きな交差点で信号待ちをしていると突然大きくて強い風が吹きました。それはごうごうという音とともに吹き荒れ、まさに「春の嵐」。つないでいた手をもっと強く握ろうとした瞬間、まいちゃんの体がふわりと浮き上がりました。

「あ」

「あ」

2人が同時に口を開けたとたん

びゅごーーーー


まいちゃんの体は空高くまい上がっていました。

「あらあら、まーいちゃーん」

「おかーあさーん」

「気をつけてねー、お母さん、お庭で待ってるねー」

「はーい」


ハトよりも高く

「フォロッフォー」

カラスよりも高く

「カァー ガァー?!」

ハイタカと同じ高さまで来ました。ハイタカは風の力をじょうずに使ってらくらくと飛んでいます。

「タカさん、こんにちは」

風に乗って 流されていくうちに塔のてっぺんまで来ました。よく見ると、ハイタカの巣があります。

「タカさんはこんな高いところにおうちがあるんだ」

もっとよく見ようと姿勢を変えたら、塔のでっぱりに 服がひっかかってしまいました。おかげで巣がちょうどよく見えます。

「あらあら、タカさん家族ですね。こんにちは。ちょっとおじゃましていてもいいですか?」

驚いたハイタカの奥さんが まいちゃんの服をつつき始めました。

「ちょっと待って、ハイタカさん。くすぐったい」

身をよじって笑いをこらえていると、びりっと音がして服が破れてしまいました。まいちゃんはまっさかさま。下におりていきながら

「タカさん家族のみなさん、おじゃましましたー。

さよーならー」

大きく手を振りました。


それからは あっという間です。

ハイタカを真上に見ながら

カラスをとおりすぎ

ハトをとおりすぎ

スズメと同じ高さまで来て

大きな木の上に


ばさーんっ


枝や葉っぱをすり抜け


ばさ…どさ…ずさ…


どっっっっしーん


ついたところは まいちゃんの家のお庭でした。

「あら、おかえりなさい」

お母さんの声がしました。ふりかえると、ほうきを持ったお母さんがニコニコして立っていました。庭の落ち葉をはいて まとめておいてくれたのです。

「お空の旅は楽しかったですか?」

「うんっ! とーっても楽しかった!」

二人は手をつないで家に入りました。これから お昼ご飯を食べながら、まいちゃんの青空リポートが始まるようですね。

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お空を飛ぶ 丸 子 @mal-co

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