第113話 目覚め
彰吾が頭の使いすぎと、気疲れで丸1日休むことにした日の夕暮れ時、は所は変わらず辺境の遺跡にある医務室では大きな騒動が起こっていた。
いつものように神官が意識の無い5人を診察していた時の事だった。
「っ!?至急でドルトス教皇様を御呼びしろ‼」
何かに気が付いた神官の1人が扉の前に居る別の若い神官に、叫ぶようにドルトス教皇を呼ぶように伝える。
だが部屋に入った瞬間に言われても理解できるはずもなく。
「え?」
「速くっ!!」
「は、はい‼」
有無を言わさない勢いに、まだ若い神官は怯えたように返事をして急いでドルトス教皇を呼びに向かう。
それを見送ってからも医務室では神官達が慌ただしく動き続けていた。
ほどなくして大急ぎで集まったドルトス教皇を始めとした教会の上層部が多く集まって、医務室へと入ってきた。
「なにか、あったのですか?」
「もうすぐ目を覚ましそうなのです」
「っ本当ですか?」
話を聞いてドルトス教皇は視線をいまだに起きることなくベットで眠っている5人を見るが、どうみても簡単に目が覚めるようには見えず怪訝そうな表情を浮かべる。
そんな疑うように見られて神官の男は慌てて話す。
「ほ、本当です。数分前より魔力などの動きが活発になってきているので、後い1時間もしないで目を覚ますはずです」
「…なるほど、そう言う事でしたら待ちましょうか」
少し早口にされた説明だったが、それを聞いたドルトス教皇は真剣な表情で考えながらも頷き目を覚ますまで待つ事を決めた。他の付いてきた神官達も本当に大丈夫なのか?と少し不安げだったが、教皇のドルトスが決めたことに反対する事もなく大人しく待つ。
それからは診察をしている神官たちにとっては地獄のような時間だった。
普段なら直接は会う事もないような高位の神官達どころか、教会のトップである教皇すらが部屋の端に立って自分達の働いている所を見ているのだ。気が休まらないし何かミスをしてしまわないか、とにかく気になって仕方がなかった。
それから1時間半が経過して、ついに5人が…目覚めた。
「うぅ…」
最初に目を覚ましたのは
「こ、ここは…っ⁉」
目を覚ました瞬間に見知らぬ遺跡の中で純白の神父のような服を纏った集団に囲まれているのだ。その事に気が付いた瞬間に諦聖は跳び退くように後ろに下がって壁に激突した。
「っ!な、何の音⁉」
「うるせぇ~なぁ~」
「なに?」
「っ……」
その激突音によって目覚めかけていた他の4人『
そして同じように周囲の状況を見て怯えたように部屋の隅へと全員で固まる。
「本当に起きましたか…」
半信半疑だったドルトス教皇は言った通りに目が覚めたことに驚いた表情を浮かべる。だが、すぐに怯えた様子の5人を見て優し気な笑みを浮かべる。
「驚かせてしまったようで申し訳ない。私は教皇のドルトス・ヒスラーと言い、貴方達を保護した者です」
「ほ、保護?」
急に保護と言われてもピンとくるはずもなく諦聖は不思議そうに首を傾げる。
その様子を見てドルトス教皇は目の前の少年少女達が何も知らないのだ…と理解して、今後の説明内容を少し考えてから話始める。
「ここは教会で管理している遺跡の一つでして、皆さんはそこに突如として現れたのです。どこから来たのか、それすらわからず意識すら戻らなかったので勝手ながら私達で保護したという事です」
「な、なるほど…」
ひとまずは全てを話さず嘘をつきすぎない説明で不安を取り除くことから始める事にした。もっとも簡単に不安がなくなるはずもなく、そこからドルトスはゆっくりと会話を重ねていこうとした。
だが、そこで『ぐぅ~』と大きな音が鳴った。
「あ…」
その音の発生源だったろう町田 凛がお腹を押さえて、恥ずかしそうに顔を赤面させる。
「話しは後にしましょうか、皆さんは丸1日意識を失っていたのですからお腹が減ったでしょう。すぐに何か用意させますね」
さすがにお腹の減った状態の相手に小難しい話をしても意味はない。
ドルトス教皇は言った通り、すぐさま近くにいた神官達に人数分の食料を用意するように伝えた。同時に自分達がいては気が休まらないだろうことにも気が付いた。
「では、話の続きは食事をして休んでからと言う事にしましょう。まだ意識が戻ったばかりですから、一応ですが神官を1人扉の前に待機させておきますので、何か用があればお声がけを…」
そう言ってドルトス教皇は他の神官達を連れて治療室の外に出た。
同時に中からは何かを小声で話しているような音が聞こえてきたが、誰も聞き耳を立てるような事はなく移動する。
「彼等の様子は逐一確認して、自傷行為などをしないように気を配っておくように」
「畏まりました」
「必要以上の接触もしないように、直接会える者もこれ以上増やさないようにしてください」
「畏まりました」
移動しながら、それぞれへ必要な指示を出しながらドルトス教皇が諦聖達へと何を話し、何を話さないべきかを考え続けるのだった。
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