第103話 スキル修練室


 久々に彰吾がやってきた玉座の間は普段からメイド型や執事型の人形兵達が掃除をしているので綺麗に維持されていた。

 そんあ綺麗で少し神秘的にも見える玉座の間で彰吾はまっすぐに玉座に向かって座る。


「ふぁ~相変わらず最高の座り心地~」


 座った瞬間に体を包み込むようにフィットする玉座は最高感覚に彰吾は思わず呆けてしまう。あまり使う事がないだけにいまだに耐性ができていなかったのだ。

 数分、至高の座り心地を堪能した彰吾はゆっくりと本題に入るために背もたれから体を離す。


「立ったままやるのは抵抗があったから座ったけどミスったな。まぁ~気持ちよかったからいいけど、それよりも本題だな」


 そう言った彰吾は魔王城の操作ウィンドウを表示させる。

 以前はサポートシステムの話を聞かないと満足に操作できなかったが、今では1人で問題なく操作できるようになっていたのだ。


――――――――――――――――――――――――――

【魔王城メニュー】

残存魔力:139,292→45690372 住人:124→547人 配下:0人/人形兵:500→800体/人形兵・獣型:329→412体/人形兵・虫型:340体/他:415体

・建築

・改築

・防衛

・修復

・生産

――――――――――――――――――――――――――


「こう見ると色々増えたな~主に住人の数」


 表示された操作ウィンドウに掛かれている数字の変化に彰吾は感慨深いといった様子だった。以前に比べて圧倒的に増えた住人の数、他にも人形兵達もかなりの数が増えていた。

 それだけにここ数カ月で何があったのかを鮮明に思い出してきてしまったのだ。


 とは言っても時間を無駄にするのは休む時間が減る、なので彰吾は頭を切り替えて目的のために動き出す。


「えっと、まずは建築から…っと」


 使ったのは数回しかないので慣れてきたとは言っても、どこか拙い手つきで彰吾は操作する。


――――――――――――――――――――――――――

《建築:特殊効果室》

・治療室・小:5000

・治療室・中:20000

・治療室・大:80000

・肉体修練室・小:5000

・肉体修練室・中:20000

・肉体修練室・大:100000

・魔力修練室・小:5000

……

――――――――――――――――――――――――――


 そして表示されたのは特殊効果が付与されている部屋の一覧だった。

 例えば『治療室・小』の効果は普通の治療室としての機能に加えて、部屋自体に微量な回復魔法が常時発動していて掠り傷程度なら部屋にいるだけで数秒で治るのだ。

 『○○修練室』と書かれている部屋では○○に入る物を鍛える時に補正が掛かり、通常通りに修行したりするよりも圧倒的に効率が良くなる。他には薬品や錬成の成功率が上がったり、儀式魔法を行うための祭儀場などが無数に並んでいた。


 ちなみに名称の後ろの『小・中・大』とは部屋の大きさや効果の強さが変わってきて必要な消費魔力の量も増える。維持費にも日に最初に消費した魔力の10分の1消費する事にもなるが、住人の増えた現状なら大した問題にはならなかった。


 そんな中で今回の目的の部屋は『スキル修練室・大』だ。


「あった…けど、やっぱり高いなぁ…」


 リストの中から『スキル修練室・大』を見つけた彰吾だったが、表示された膨大な消費魔力量に難色を示す。


――――――――――――――――――――――――――

・スキル修練室・大:25000000

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 現在の使用可能な魔王城の魔力の5分の3近い消費量だった。

 だがぼったくりと言うわけではなく、むしろ他の奴と比べて適応範囲が広くスキルのレベル上げ効率も数値にすると通常に2倍速くなるのだ。しかも彰吾には称号や特殊なスキルの効果で元々レベル上げの効率は他の物と比べると圧倒的だ。

 そこに修練室の効果も合わされば文字通りの化物級の結果を生む事になる。


 誰よりもその事を自覚しているからこそ彰吾にもスキル修練室・大を諦めるという選択肢はなかった。


「仕方ない…仕方ないよな…うん…」


 高額な買い物をするような気分になっているのか彰吾は確定するための操作に躊躇して、自分に言い聞かせるように小さな声でブツブツと言いながらゆっくりと操作していた。

 なんだかんだ見つけてから更に5分以上を掛けて確定した。


「はぁ…はぁ…なんか疲れた…」


 ただ魔王城に部屋を追加しただけなのに異様な疲労感を味わう彰吾だった。

 本来なら追加と同時にスキルのレベル上げの為に部屋へと向かう予定だったが、本当に予定外に疲れたのか1時間ほど最高の座り心地の玉座に体を預け休むのだった。

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