魔王城の発展

第100話 忙しい日々を過ぎて


 ハルファとの決闘、それに加えて同盟などの夜まで続いた話し合いも終わってから1週間がたった。

 その間にあったのはレータストリア獣人国との秘密裏の同盟が締結した事で再開ドワーフの街との交易についての話し合い。主な内容は関税や相互に輸入する物の内容と量を決めた。


 荒野と言う立地ではあるが死の大地と言うわけでないレータストリア獣人国は、国土こそ人間の国には負けるが農業に関してはちょっとした中規模国家以上の生産量を誇っていた。

 だが反対に鉱物資源には乏しく、武器などは高価な物でドワーフの街から元々輸入してた品も原価の1.5倍で販売されていた。


 対して近くに鉱山があって更には人間達との交渉で報酬を鉱石などだけにしていた。そこにドワーフ達の技術力があるので大半の物品は自給自足が可能だった。

 しかし畑などを作る土地的な余裕などはなかったドワーフの街は、食料を外部からの輸入に頼るしかなくて足元を見られた交渉をされることも多かった。一応は食料の停止を脅迫材料などにならないように一国に依存しすぎないように気を付け、すべての国に平等に取引していた。


 お互いに解決したい問題を抱えての話し合いは『魔王』と言う1つのピースが間に入る事で異様なまでにスムーズに進んだ。


 最終的にはレータストリア獣人国にドワーフの街は優先的に品質の高い武具を週に1度、1種類100個ずつ送り。反対にレータストリア獣人国側からは週に1度で街の住人が1週間分の食料が送られる事になった。

 ちなみに話し合いの席にはハドリフが参加して、ドワーフの街からはヴォルト議員が参加していて立会人として彰吾も呼ばれていた。


 特に話す事もなく進む話の場に居た彰吾は退屈そうだったが、最後に取引の契約書に立会人としてサインして終わると『二度と参加しねぇ…』と静かに零した。


 そうした面倒事も熟しながら1週間を過ごした彰吾は朝日の見える魔王城の最上階へと来ていた。


「んぅ~~っ!たまには朝日を浴びると気持ちいいなぁ~」


 普段はしないような上半身裸で引き締まった体を丸出しにした彰吾は、山間から差し込む朝日を全身で余すことなく浴びて気持ちよさそうにしていた。

 基本的には引きこもって読書にだけ没頭していたいタイプの彰吾だが、さすがに疲れが溜まった時などにひっそりと朝日を浴びに来ていた。


「………すぅ………ふぅ………」


 そしてゆっくりと深く深呼吸を繰り返しストレスなどで荒んだ心を整えていった。

 一種の自己暗示に近いが、こうする事でストレスで極端な思考などにならないように彰吾は自分の調整をしていたのだ。この世界に来てから同時に魔力を体の中を循環させ、体の調子すら整えて魔力への肉体の順応性を高めていき、魔力操作の技術も同じく自然と身についていた。


 30分ほど深呼吸を繰り返した彰吾は上着を着た。


「さすがに肌寒いな。無茶だったかぁ…風呂入ろ」


 さすがに朝方は気温が低く上半身裸はやりすぎだった と少し反省して急ぎ足で個人用の風呂へと向かった。

 完全に自分の為だけに用意したひのき風呂に浸かっていた。


「ふぅ……朝から温泉って贅沢だよなぁ~」


 全力でだらけながら彰吾は大窓の外の景色を楽しむ。

 ここも高い位置に造ってあるので遠くに見える山や手前の森などの雄大な自然を見ながら、地球でも個人で持っているのは一部のお金に余裕のある人だけの檜風呂の温泉を楽しんでいるという状況が少し彰吾には感慨深かった。

 魔王になったおかげで自由に改築・増築ができる城を手に入れた事で、地球の頃だと目立つからできなかった贅沢な生活を実現できている。


 だからこそ苦労も多くても頼まれたことを放棄しようなどと考えても、その手前で絶対に踏みとどまって頑張る気になっていたのだ。


「ふぅ~………少し寝よ」


 それでも疲れは溜まる物で城の機能でくみ上げた温泉の効能も合わせ、彰吾は徐々に抜ける疲労感の気持ちよさに負けて徐々に眠くなり。気が付いた時には目を閉じて、湯船に浸かりながら眠りについていた。

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