第87話 集まる亜人達

 急いで保護予定の亜人たちの受け入れの為の準備を始めた彰吾は、一先ずどんな種族でも住める魔王城の入り口近くにある兵舎をMPを使用して拡張して仮説住居とした。

 食料などの生活に必要な物品はエルフやドワーフに生産してもらう事で生産量が増加した事もあって量は十分に確保できた。


「よし!これで大体16組1000人弱だから、まぁ…これでも十分だろ」


 聞いた限りの人数が数日は生活できるだけの物資を確認して必要以上に用意しても問題だと思い、それ以上持ってくる事はなかった。

 ついでに森中に居る人形達に魔物達に麻痺薬などを打ち込んで無力化させ、避難してくる亜人達の安全を確保する。念のため人間達と遭遇しそうになる時も虫型人形に音をたてさせて注意を逸らす事で対処した。


 そうしている間に最初に狼着したのは30人程度の小人達だった。

 先頭には助けを一番最初に懇願してきた小人族のデイの姿があった。


「同法30名を連れ、戻ってまいりました」


「よろしい。ようこそ小人…ホルーダ族の者達、ここまでの旅で疲れただろう。簡単な食事を用意してある、ゆっくり休み英気を養うがいい…ここにはお前達を脅かす者はなにも居ないからな」


 片膝を付いて話すデイを見て彰吾は彼等を歓迎した。

 実際に彼等の体は大小の傷が無数に存在して、表情にも隠し切れない疲労が浮かんでいて今にも倒れそうな者の姿を見る事が出来た。

 それだけに彰吾はこまごまとした今後の話を後に回して、今はゆっくり休んでもらう事にしたのだ。


「デイはついて行かなくていいのか?」


 最後に何を思ったのかデイだけが残っていた事に気が付いた彰吾は理由を聞く。

 すると自信に満ち溢れた表情をしたデイは顔を上げて、真っすぐに彰吾を見つめていた。


「はっ!この度は私の同胞を助けていただきありがとうございます」


「別に気にする必要はないんだが、感謝はありがたく受け取っておく。それよりも仲間達と過ごさなくていいのか?ここなら敵は来ない。安心して過ごせると思うぞ」


「はい、ですがどうしても改めて感謝伝えたくて…」


「わかったから。今は久々の安息を満喫してこい」


「はい!」


 いつまでも感謝を伝えようとしているデイだったが、改めて彰吾が仲間と過ごすように言うと今度こそ嬉しそうにに満面の笑顔で仲間の元へと向かう。そこには涙を浮かべながら笑い合い、彰吾の用意した食事と酒を思い思いに飲食しながら騒ぎ続けていた。

 その光景を見ながら彰吾は小さく笑みを浮かべて次に来る亜人達に備える。


 準備とは言っても、同じく宴会用の食事と酒やお菓子を追加で無くならないように用意し続ける。


 それから日が完全に沈むまでの間に獣人国とは別の獣人達に加え、エルフや有翼種ハーピィに巨人族に蟲人族など以前に女神達から聞いていないような亜人種達もやってきた。

 ほとんどが魔物に近い扱いを受けているこれらの種族達の登場には、通常の亜人たちは驚いているようすだった。


 でも彰吾の説得と実際に彼等と接することで、割とすぐに打ち解ける事に成功していた。お酒の効果も多少はあっただろうが根本は『同じ被差別種族』という事が同族意識を芽生えさせ、馴染むのに協力したことは間違いないだろう。


「……こうしてみると本当に魔王って感じの絵図らになるな」


 数多の異形ともいえる者達がどんちゃん騒ぎしている姿を見て彰吾はしみじみちそう言って、静かに彼等に気が付かれないように気を付けながら魔王城の自室へと戻った。


 これ以上自分がいてもせっかくの交流の機会を邪魔してしまうだけだと考えたのだ。あとは単純にしつこいくらいに感謝の言葉を言われ続ける状況が馴れてなさすぎて、落ち着かなかったようだ。

 そうして自室に戻った彰吾が久々に多くの者と会話したり、不快な相手と会話した疲労もあって瞬時に眠り。



 翌日の朝に少し疲労の取れた彰吾は足早に保護した亜人達の確認に行くと、まるで昔からの友のように気心の知れた様子で過ごす亜人たちの姿があった。


 その事を確認して彰吾は満足げに頷いて亜人達の今後を話すために必要な準備をするのだった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


 それと同時刻、逃げかえったグルスト達から彰吾の伝言を受け取ったレータストリア獣人国では王城の一角が弾け飛ぶという大事件が起きていた。

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