第74話 聖騎士隊 VS キマイラ《1》
時はヴィスラが魔物すら見つけられなくて苛立っていたころまで戻り、魔の森の入り口にはリューナを始めとした教会騎士団第15中隊の面々がそろっていた。
そんな中隊の者達の前に立ってリューナは今回の任務の作戦を説明する。
「これより魔の森の調査を開始する!事前に話した通り、まずは1小隊ずつ左から順に入ってもらい。全小隊の突入が完了後は連絡を密にしながら中心部近くまで3日かけて調査して進む。見かけた魔物は討伐、竜種の痕跡を発見した者は手を出さずに報告と撤退を最優先!以上、なにもなければ行動開始‼」
「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」
あらかじめ大まかな作戦は説明していたので質問や異議など出るはずもなく。
全員が綺麗に返事と敬礼すると各小隊は持ち場へと移動していった。
それを確認しながらリューナも自分の持ち場である中央の小隊へと向かう。
「ふぅ…全員準備はいい?」
「「「「「問題ありません」」」」」
白金の鎧に身を包んだ小隊の面々は手に持つ武器を構えて見せ、戦う準備も含め問題ない事を示す。
別に戦い自体が目的ではないためにリューナは少し微妙そうだったが、やる気があるのは悪い事でもないので気にしないように努める。なにせ、実際に戦闘優先で独断専行している者も居るのだ。
指示に従ってくれるだけ、まだましだと思ったのだ。
「では、行くわよ」
そう言ってリューナを先頭にして森の中へと入って行った。
各小隊の影が遠目に見える距離、それを計算して配置されているので何か異変が起きれば瞬時に全体に伝わるようになっていた。
だが、魔の森に履いて30分少々が経過すると異変に全員が気が付きだす。
「魔物どころか…動物すらいません」
「鳥の巣は見つけました。ですが、巣の主は数日は戻ってなさそうですね」
「こちらもウサギなどの巣を発見。しかし巣の主の姿はなく、数日にわたって何かが入ったような形跡が見当たらないです」
「向こうにかなり前だと思いますが、なにかの血の跡を発見。解析させてますが、何か発見できるかは運だとのこと」
「あちらに何かの残骸らしき…」
最初に動物どころか魔物すら1匹も姿を見ない事に数人が気が付き、周囲をよりくまなく調べるようになった。さすがに人間のように足跡など含めた痕跡は見つけられなかったが、何かの動物や魔物が作ったであろう巣を発見する事には成功していた。
しかし巣のどこにも最低でも1週間以上は生き物がいた形跡がなかった。
なかには肉食系の魔物の形跡も見つけたが、餌の残骸などから見ても蝕されたのは1週間以上も前という事だった。他にも血の跡など、生き物がいたらしき痕跡は残っているのだが、そのすべてが最低でも1週間以上前の物で以降は何の痕跡も発見する事はできなかった。
そんな報告を各所から送られたリューナは事態は最悪の方向に進んでいると確信した。
(想定以上に不味い…竜種が目撃されたのが1月以上前、そのころから警戒して冒険者太刀すら森に入らなくなった。その間に森中の魔物を狩っていた存在が居たとするのならば、今はどれほどの…)
魔物にもレベルと言う概念はあるのだ。
人間でも魔物と戦う事を生業にしている者くらいしか興味が無くて知らない話だが、魔物は人間と違い一定のレベルを超えると上位種へと進化する。
もし魔の森中の魔物を1体の魔物が全て狩っていたのなら、たかだか中隊規模で勝てるかは疑問だった。
そんな圧倒的な強者との戦闘などは本来なら避けるべきなのだが、さすがに確証もない現状での早期撤退はできない。単純に竜種への恐怖で一斉に逃げただけの可能性もあるからだ。
「ひとまず周囲を警戒しながらぜんs【グラァ゛ァァァァァァァ!!!!】っ⁉」
警戒の降り強めて調査を続けようとしたリューナの言葉を遮るようにして寒気を及ぼす叫び声が聞こえてきた。それを聞いたリューナ誰が何をしているのかを本能的に理解していた。
「あのバカ!この異常事態に呼び寄せるなんてっ」
ヴィスラが得意としている魔法の1つ【
そんなところで無差別に範囲内の対象に効果を及ぼす魔法を使用すれば必要のない刺激をしてしまう。
一番に避けたかった事をやられたリューナの怒りは半端なかった。
それでも怒りに任せてヴィスラを今頭具に殴り飛ばしたい衝動を抑える。なにせ、このままでは関係の中隊の者達が巻き込まされる可能性が高すぎた。
「全体に通達!小隊長格ではない隊員は全員で魔の森から退避‼街にて厳戒態勢で防衛の準備をするように通達!協会本部へともしもの時の救援要請を忘れるなっ!」
「そして残った小隊長達は今聞こえた咆哮の発生源へと向かう!私に続け‼」
現状出せる最大限の指示を出したリューナは自身の魔力を滾らせ身体強化を使い翔ける。
一秒すらもったいないと言うように慌てて行動するリューナを見て隊員達も危機感を強く持ち指示に従って動き出す。現状に置いては中隊長であるリューナの指示に従うのが最適解だと全員が認識したのだ。
そうして各小隊長6名を連れてリューナが向かっていると、上空に応援要請の信号弾が上がる。
「急ぐわよ!」
「「「「「「了解!」」」」」」
速度を上げて向かった先では動けなくなったヴィスラにキマイラが、今まさに止めを刺そうとしている場面だった。
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