第64話 妖精騒動‼《5》
そして妖精の集落全体が今回の犯人がいつ戻ってきてもいいように万全の態勢を取り。森に放たれた虫型人形達が森林エリアに放たれたのと同時刻の事だった。
森林エリアの中でも人いは木々が生い茂り周りから見難い場所があり、そんな場所の木のうろの中にティー達は居た。
『アハハハっ‼あいつら全然気が付かないで寝てたわね‼』
『本当にね~!さすがに起きると思ったけど少しも気が付かなかったよ!』
『もっと面白い絵描いても良かったかもね?』
『なら、次は畑に巨大な絵を描いてやろうよ‼』
『『『『いいね~!』』』』
自分達が追われる立場になっているとは欠片も思っていないティー達はのんきに大きな声で騒いでいた。いたずらに成功した、だから次も問題なく成功すると無意識に思っていたのだ。
そんな時だった。
『…?なんか森騒がしくない?』
一人の妖精が外の森がいつも以上にざわつきだしている事に気が付いた。
その言葉を聞いた他の妖精達も外を確認する。
『…別に普通じゃない。急にどうしたのよ』
『いや、なんか森がザワザワいっているような気がして…』
ただ他の妖精が見た時には何も起きてなく呆れられたが、もう一度妖精が外を確認すると…森の木々が一斉に揺れ出した。
『な、なにが起きてるの⁉』
『私にわかるわけないでしょ!』
『ティー!ここって安全なんだよね⁉』
『もちろんよ!この辺りでは一番大きくて頑丈な樹なんだから。その気に私達が魔法で強化までしてるのよ?安全に決まってるじゃない』
急に話を振られたティーは胸を張って自信満々に答える。
なにせ現在ティー達が居る木は森林エリア内で一番の硬度を持つ木で、更には樹木系の魔術を使用して強化まで施してあった。木の現在の硬度はワイバーンの突撃くらいなら20回は受けても折れる事が無いほどに強化されていた。
そんなことまでは正確に知らないだろうけどティーが自信満々に言い切るから、他の妖精達も安心したようだった。
『でも、なんか近づいてきてない?』
『…近づいて来てるよ!』
木々のざわめきが近づいて来ている事に気が付いた妖精達は恐怖から慌てだす。
しかし比較的に冷静だったティーは身を守るのに最適の答えを出す。
『入り口を塞ごう!何か来てるのかも‼』
『わ、わかったっ』
何が近づいているのかは分からなかったが、だからこそ恐怖の勝ったティー達は自分達が出れなくなることもお構いなしに入り口を樹木を操作して塞ぐ。でも、外の様子は見たかったのか小さな隙間はちょっとだけ空いていた。
『はぁ…はぁ…』
『な、なにが怒ってるのかな?』
『わ、わかんないよぉ』
どんなに余裕に見えても妖精達は根本的には小さな子供と同じ程度の精神年齢だ。未知の訳の分からない事象に巻き込まれてすでに限界に近付きつつあって、目に涙を浮かべる者すらいた。
でも、入り口は自分達で塞いでしまったので逃げる事もできず異変が収まるまで大人しくしているしかなかった。
『『『『『………』』』』』
何をするでもなく、先ほどまでの騒々しさが嘘のようにティー達は誰も話すことなく静かになってしまう。
そしてついに近くで木々のざわめきが聞こえてくると、同時に何か硬い物がぶつかるようなカン!コン‼と言う音が聞こえだす。
『な、何の音⁉』
『そ、外見てみなよ!』
『嫌だよ!怖いもん‼』
狭い空間に数人で一緒に居て限界にきたティー達は険悪な空気となっていた。
先ほどまでお互いに悪戯の結果を笑い合っていたのなど嘘のようなありさまだった。結局しばらくは押し付け合いを続けていたが、誰も譲らず最終的には全員で一斉に外を見る事になった。
『せーの!で見るんだからね⁉』
『わ、わかってるよ!』
『『『『『せ~の‼』』』』』
合図と共に外を見ると木々が激しく揺れているが別に風が強いわけではないのに、何か黒い点のような物が高速で移動しているのが見えた。
『なにあれ?』
『わかんないけど、虫みたいだったよ?』
『え、姿見えたの⁉』
あまりの速さに天にしか見えなかった影の姿を見たと言う者に他の全員の視線が向く。その事に少し怯えながらも見たことを話した。
『な、なんかね。大きい角の生えた虫みたいなのが飛んでたの』
『角の生えた虫?』
それはカブトムシの見た目を再現して作った虫型人形だったのだが、この世界には虫型の魔物はいても通常の虫は追わず見た妖精も正式な名前を知らないようだった。同じように他の妖精達も芋虫のような虫は見たことがあったようだったけど、巨大な甲虫などは詳しくなかった。
『ただ飛んでるだけなら、別に怖がらなくてもよかったか?』
『そうかも!虫に怯えすぎたわね』
『確かに‼』
『『『『『『ははは!』』』』』』
相手をただの虫だと思っているティー達は気を緩めて大声で笑った。
その声を虫型人形は拾っていて1体は彰吾へと報告に戻り、残りで木の周りを逃げられないように静かに方位を完了させていた。後は主からの命令さえあれば瞬時に突撃する事が出来るようにとね。
『畑に描く絵ってどんなのにする?』
『畑だし果物絵でも描いてみようか?』
『それもいいけどさ~だったら~』
包囲されていることなど知らないティー達は包囲されているなんて夢にも思わず楽しそうに話し続けるのだった。
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