第60話 妖精騒動‼《1》


 そしてしばらく休んだ彰吾だったが普通に眠りたくなってしまい。

 妖精達の家の輸送を人形兵達に任せて、一足先にエイシャと共に森林エリアへと言ってエルフ達へと挨拶を済ませた。

 と言っても、エルフにとって精霊が契約を結び協力してくれる良き隣人であり家族だ。

 その精霊と近しい妖精は性格にこそ何はあるが拒否するような感情など持ち合わせておらず、気持ちよく受け入れてくれた。


「同じく故郷を追われた者を無下にはできないですからね」


 なんてことをエルフの代表であるアイアスは少し恥ずかしそうにしながら言っていた。その事を他のエルフ達はリーダーが板についてきたな~と感心するから余計に顔を赤くしていた。

 そんなエルフ達の様子を見てエイシャはいい隣人ができたと安心するのだった。


『魔王様、この度は助けていただいた上に安全な住居までありがとうございます。今後何かありましたらお声がけください』


「あぁ…何かあったら頼むことにするよ」


 ここまでの好待遇は予想していなかったエイシャは心の底から感謝の言葉を口にした。本当に何かあれば自身の命を賭して手助けしようと決意していた。

 しかし彰吾は疲れ切っているため返事が緩くなっていた。


 なんとか最後まで気力で起きていた彰吾はエルフの集落から少し離れた所に妖精の集落を設置して、しばらくの食料として果実などを人形兵に持ってくるように手配して魔王城の自室に戻って瞬時に眠った。


 それから彰吾は3日に渡って眠り続けていた。


 4日目の朝、いつも通りに彰吾はメイド型の人形兵による鉄拳で目を覚ました。


「うぅ……やっぱり他の起こし方に変えようかな…でも起きれるかわかんねぇしな」


 腹にマジの鋼鉄製の拳を受けるのは痛みが無かろうが衝撃は残る。

 その不快感が嫌で他の起こし方を考える彰吾だったが自分の眠りが他よりも睡眠が深い事を理解しているだけに、穏便な方法だと起きる事ができないという不安から帰る事が出来なかった。

 そんなことを考えながら朝食を取っている時だった。バン‼っていう大きな音と主に乱暴に扉が開いた。


「魔王陛下‼あの妖精達を止めてください‼」


 飛び込んできたのはアイアスで普段から鍛えられ、整った綺麗な顔は何故か血ではないが赤や青などで色鮮やかに彩られていた。

 食事中に衝撃的な知り合いの顔に彰吾は食べている物を噴き出しそうになるのを必死に飲み込んだ。


「え?なに?あいつら何かやったの…って見た通りか」


「はい…エイシャさんが何かと注意しているようですが、彼女のいないタイミングを狙って…」


 悲痛な表情を浮かべて話すアイアスだが握りこぶし硬く怒りを抑えていた。

 そんな様子を見て彰吾も妖精達がどのようにしてエルフ達に迷惑をかけているか、なんとなく想像できた。


「あぁ~わかった…一先ず具体的に何をやられたか説明してくれるか?」


「わかりました。まずは…」


 説明を求められアイアスは妖精達が来てからの事を話した。


 最初の一日はお互いに親睦を深める意味合いで宴会を開いたんだそうだ。

 エルフ達は野菜や花の蜜を使ったデザートに植物を使用したお酒など、むっすうのエルフ特有の料理を用意して全力でもてなした。

 それを受けてエイシャも急遽で妖精の実と呼ばれる、妖精が実らせる事の出来る希少な木の実などで返礼として宴会は無事に進行して、最後にはエイシャとアイアスの2人が友好の挨拶をして終わった。



 しかし問題は2日目からだった。

 ずば抜けて高い適応力を見せた妖精達は翌日から森林エリアを自由に跳び回っていたそうだ。その光景を見てエルフ達は安心したように微笑ましく見守っていた。

 本当に問題が起き始めたのは昼過ぎ頃、昼食を取っていたエルフ達の弁当に妖精が近くで捕ってきた虫を乗っけたのだ。自然の中で生きるエルフとは言え不意打ちで生理的に拒否してしまう見た目の虫が降ってくればパニックを起こす。

 そのせいで昼食のお弁当は地面に落ちてしまい…上から見ていた妖精達は笑い声をあげた。


『あはははっ‼大きな悲鳴‼』


「っ⁉なんで、こんな事を⁉」


 笑い声で気が付いたエルフは理由を問うたが妖精は無視してどこかに飛んでいったそうだ。同日に他の場所でも妖精によるちょっとした悪戯が複数起きていた。

 その報告を受けたアイアスを始めとした数人は頭を抱えたが、まだ起きなもんだいではないし新しい場所に来てはしゃいでいるだけだろう…と判断してエイシャに話をするだけにした。


 もっとも話を聞いたエイシャは顔を赤くして魔力をほとばしらせて怒り狂っていたようで、その様子を見てエルフ達はこれ以上口を出すのはやめておこうと決めたようだ。


 だが3日目…またしても妖精達が騒動を起こす。

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