第59話 妖精用の家
人間の方位を抜けてかは特に何のイベントもなくのんびりと魔王城まで帰ってきた。
『『『『『『『『『すご――い‼』』』』』』』』』
そして現在は魔王城の上空まで来ていた。
空から見る魔王城の光景に妖精達が興奮して甲高い声ではしゃぎながら全体を見回した。
同じくエイシャも上空から見る魔王の居城を見て他とは違う意味で驚愕した。
(なんなのこれ…あの見張り台のような塔…あれを起点に複雑に術式が組まれてる。壁に込められてる魔力も途方もないし流れている魔力の量も…)
他とは違い特別な眼を持つゆえに見える魔王城を包み込む濃密な魔力で編まれた結界などの術式、無駄に強大な魔力の発生源まで視認できてしまい恐怖に震えていた。
魔王城の核と成る巨大な魔石。
そこから魔王城全体へとめぐる魔力は膨大だ。
具体的に言えば彰吾の約50人分の魔力が一転に集中してほとばしっているような感じと言える。
他にも彰吾が集めた魔物の中でも強い個体。剛力巨猿と七尾ノ妖狐にバーサーク・ボアとアイアン・ディア―など途轍もない力を持つ存在も個別で確認していた。
(魔王陛下の他にも強い存在が複数、でも特に強い2体からは命の気配を感じない…)
そしてエイシャが何よりも警戒するほどの力の波動を放っていたのはクロガネとギンソウだった。2体は彰吾も力を入れて製作と強化を行っているので単純なステータス上の強さだけだったら魔王としての彰吾をすら超えている。
ゆえに放たれる魔力は遠くからでもハッキリと理解できた。
(はぁ…やはり魔王陛下の庇護を受ける決断は間違っていなかったわね)
そうして魔王城の全てを確認してエイシャは自分の決断の正しさを確信する。
しばらくして他のドラゴン型人形が止まっている広い草原に着陸した。
「さて、避難は完了!ようこそ俺の城へ‼」
無事に全員が降りたのを確認して彰吾は楽しそうに両手を広げて妖精達を歓迎する。
もっとも、すぐにいつもの彰吾に戻って今後の話を始める。
「まぁ、このままじゃ住む所もないし不便だろ。なにか注文があれば今なら聞くぞ?」
『住むところまで用意してもらえるのですか?』
「さすがに、そのくらいは用意するって」
エイシャとしては避難場所になってもらえるだけでも十分なのに、住居まで用意してもらえるなんて思っていなかったようで恐縮していた。
さすがの彰吾も保護だけして着の身着のままで無駄に広い魔王城の敷地内に放置するつもりはなかった。と言っても、自身の態度が人から誤解を受けやすい事を理解しているだけに起こる事はなかった。
「それで元々住んでいたような感じで森林エリアに住居を造るって事でいいか?」
『っそうしていただけると、とてもありがたいです』
草原で話をされたので、ここに住むのかと思っていたエイシャは細かな配慮に感動してお礼を言った。
それを受けて彰吾は話を進める。なにせもう疲れていたのだ。
前日の夕方から調子に乗ってほぼ動き通しで休みたい欲が限界突破の寸前だった。
「じゃ、事前に同じエリアの住人のエルフには話を通しておいた方がいいか。でも住居くらいは先に造っておくか方がいいな。妖精サイズの建物なら普通に持ち運べるしな」
もはやいかに効率的に素早く問題なく事を終わらせることができるかを考えた彰吾は、すぐに行動しだした
錬金術を使用して土から妖精サイズの元の村の建物をイメージした一軒家を作り出した。
「ベースはこんな感じかな?」
『これでベースですか?すでに十分な気が…』
もはや住むには十分すぎるほどの完成度の建物を『ベース』などと言い切る彰吾に対してエイシャは動揺していた。このまま手を加える事を遠慮しようかとまで考えていると、先にティーを始めとした他の妖精達がついに我慢できなくなったようで一斉に話し出した。
『もっと白くして‼』
『お花みたいな模様もつけてちょうだい!』
『ねぇねぇ!赤いおうちは作れる⁉』
『甘い匂いがする家がいいわ!』
もう次々と放たれる妖精たちの要望の数々。
エイシャはなんとか止めようとしていたが、興奮した妖精達はちょっとの言葉で止まるような状態ではなく。それを見ていた彰悟も諦めて話を大人しく聞く事にした。
それを聞きながら彰吾は地球でのドールハウスなどを思い浮かべながら実用的な家でありながら、可愛らしさと華やかな色合いの家を造り続ける。
数時間後、そこには色とりどりの小さな妖精サイズの家々が並ぶちょっとした街のジオラマのような状態になっていた。
それを作り出した彰吾はと言うと………精魂尽き果てていた。
「お、終わった…」
さすがの彰吾も数十人の意見を同時に聞き分けて各々の好みに合わせた家を正確にイメージして建てる。そんな作業の経験などあるわけもなく、想定していた以上に魔力となにより精神力を消費していた。ようするに頭が疲れたという事だ。
そんな彰吾の横でエイシャはひたすら申し訳なさそうな表情で謝罪していた
『本当に申し訳ありません…』
「いや、別に気にしなくていいよ…エイシャも屋敷見てきていいぞ。これは俺的にも力作だ」
謝るエイシャに対して少し力の入っていない笑みを浮かべながら彰吾はそう言った。その横には腰ほどの高さの小さな2階建ての屋敷が立っていた。
他の家々と比べても豪華で綺麗な出来で芸術品のようだった。
『しかし…』
「いいって、ちょうどいい休憩になるしな」
まだ遠慮するエイシャだが、すでに他の妖精達などは彰吾へのお礼もなくすでに自分達の家へと突撃している。残っているのはエイシャと彰吾の2人だけだ。
なら一人になった方がゆっくり休めると思ったからこそ提案であった。彰吾としても横で謝り続けられても休めないしな。
『……わかりました。では、少し失礼します』
「おう、ゆっくり楽しんで来い…」
まだ遠慮気味だったがエイシャが屋敷の中へと入るのを見届けて、彰吾は地面から自分の体に合ったベンチを造って横になって休む。
「あぁ……疲れた」
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