第6話 初めての異世界‼
そしてアズリスとシルヴィアが不穏な会話をしている頃、深い森の中に魔法陣の光と共に彰吾が現れた。
「ふぅ~眩しかった!あれって光る意味あるか?どう考えても無いだろ…」
光の発生源の中心にいた彰吾はもろにその被害を受けたようで、目を細めて痛そうに擦って光の必要性について文句を言う。ちなみにあの光はシルヴィアが雰囲気付けで設定しただけで、必要性と意味は欠片も無かった。
それからすぐに痛みが引いた彰吾はようやく周囲の様子を確認する。
とは言っても周囲は深い森の中で、しかも方角が分からない中ではたいした情報は手に入れられない。簡単に特徴を上げれば、右側には頂上が雲に隠れるほどの山が存在し、反対の左側には高さはそこまでではないが巨大な影が飛び交う岩山が見えた。
他は正面に木々の間からうっすらと湖が見えて、後ろは暗くなっていて良く見えなかった。
「うん、とりあえずは水場に移動するのが優先だな」
そこまで確認した彰吾は生存に一番大切な水の確保を優先した。まずは何をするにも安全に活動できる場所を見つけなければ始まらないと判断したのだ。
なので正面の湖の見える方向へと進んだ彰吾の目の前には、すぐに広大な綺麗な湖が現れた。
「おぉ~!めっちゃ綺麗だ‼」
湖はキラキラと太陽の光を反射して輝き幻想的な光景となっていた。都会に住んでいた学生の彰吾には目の前に広がる自然の姿は素晴らしく、まるで綺麗な宝石のように感じた。
だがそれも一瞬で彰吾から見てかなり遠く、湖の中心の近くからから跳ねた影。それは彰吾の距離からでもかなり巨大に見えて、対岸に生えている木と同じほどの大きさに見えていた。
そんな生き物の影を見てしまえば彰吾も夢から覚めたように真剣な表情に戻ると、警戒したように後ろへ一歩下がった。
「綺麗だけど怖っ!ま、まぁ…とりあえず危険性はあっても水場の目途がついたな。と言う事で次は、来る前に約束したし能力の確認をしたいんだが…どうやればいいんだ?」
とりあえず水の確保に安心した彰吾はシルヴィアに言った通り能力の確認をしようとしたが、その肝心な方法を聞いてくるのを忘れていた。
それで困った彰吾はしばらく考え込んで、悩むだけ無駄だと判断して思い浮かぶ限り試す事にした。
「まずは可能性のあるの全部試すかな!『ステータス・オープン』『ステータス表示』『能力閲覧』『鑑定』『スキル表示』etc.」
何も手掛かりのない彰吾は地球で読んでいたマンガや小説に出て来た台詞を次々と試した。しかし思いつくものを全部試しても何の変化も現れなかった。
「あぁ~……これはどうすりゃいいんだ?もう適当でいいかな…『アビリティ・ヴィジョン』な~んて・・な・・・?」
何度やってもダメで自棄になった彰吾が適当に有りそうな言葉を口にして、どうせダメだと諦めていた彰吾の目の前に何か表示された。
『おめでとう!能力の表示方法を見つけたみたいね。まずこれはただのメッセージだから会話はできないのごめんなさい。能力の表示方法を教えるのを忘れていたから、念のために表示に成功したら流れるようにしておいたの』
表示されたその透明なプレートのようなものが目の前に現れると、そこからシルヴィアの声が響いて来た。
『この音声が再生されているのなら彰吾君は表示方法にたどり着いたようね。正直疑問でしょう?この少しマイナーと言うか、あまり聞かないステータス表示のキーワード。このキーワードは気が付いていたら決まっていたのよね~』
どこか困ったような声音のシルヴィアだったが、それでも楽しそうに感じる声だった。ただ彰吾はさっき別れたばかりのシルヴィアの声が聞こえて来たことに困惑していた。
しかし本当に音声は録音のようで彰吾の様子を無視して話は続く。
『それで一応だけど説明すると『アビリティ・ヴィジョン』と頭の中で唱えるだけでも確認できるから。もし声に出して言っていたのなら、今後は気を付けるようにね?それじゃさようなら~』
そんな明るい声と共に再生されていた音声は終わり。本来表示されるはずの彰吾の能力が表示されていた。
だが、いきなりの展開に彰吾はしばらく唖然として、少しして疲れたように小さく息を吐き出す。
「はぁ……うん、ちょっと文句1つ言いたいところだけど今度会った時にしよう。それよりもこの世界で生きていくためにも自分の能力を知るのは大事だよな。ちょっとワクワクするな‼」
元々マンガなどが大好きだった彰吾はこのファンタジーな世界に、実はかなり楽しみにしていた。そしてついに好奇心を押さえられなくなって音声の事や他は全て後に回し、目の前の自分の能力に目を向ける。
――――――――――――――――――――――――――――――――
名前:なし 種族:魔王 職業:魔王
レベル:1
力:B+ 魔力:A 防御力:B 知力:SS 器用:S+
俊敏:A+ 運:S
スキル 《SP10000》
速読Lv8・高速思考Lv6・並列思考Lv6・技術の極みLv2・予測Lv1・格闘Lv6
隠蔽Lv4・闇魔法Lv1
ユニーク
天武Lv5・天魔Lv3・天技Lv5・天智Lv5・怠惰・魔王・
魔王城・創造
称号
全の天才・怠惰なる者・始まりの魔王
――――――――――――――――――――――――――――――――
「おぉ~これは…凄いんだよな、見た感じだと…?」
自分の能力を確認した彰吾は嬉しそうな声を上げたが、平均の基準などを知らないのでこれが凄いのか確信が持てずに首を傾げる。
ただ表示されているように彰吾(現在は名なし)は知能が高い事もあって切り替えは早かった。
「とりあえず、確認できたから良しとしよう。良し悪しはそのうち分かるだろうし、それよりも魔王と魔王城のスキルは別スキルと言う判定なんだな。と言う事は別にしないといけないって事なんだろうけど…鑑定とかないけど詳細とか見れないかな?だと楽なんだけど」
表示されているスキルには鑑定などの便利そうなものは習得していないので、スキルの能力を詳しく知る方法を彰吾は持っていなかった。
しかしマンガやゲームが趣味だった彰吾はすぐに解決方法に気が付く。
「…あ、このSPってスキルポイントの事か。ならここを操作すれば……ビンゴ!」
思いついてすぐに表示されているSPの部分に意識を集中すると、ずらーーーっと習得可能なスキルが次々に表示される。その結果に彰吾は嬉しそうにガッツポーズをする。
ただ次の瞬間には冷静さを取り戻して表示された習得可能スキルを確認して行く。
「う~ん、定番の鑑定に識別とかは普通にあるよな。他にも各種魔法系と武器系、後は五感や能力値の強化がほとんどって感じで、後は特殊なのが少数か…さてさて何にを習得しようかな~」
スキルの一覧を確認しながら好奇心からキラキラした目で楽しそうに確認して行く。その表情には異世界に来た恐怖心など欠片もなく真剣な表情で興味をそそるスキルだけを選んで纏める。
「まずは鑑定は必要だよな習得SPは500か、他のスキルと比べても少し多いけど…まぁ問題ないだろ!もっと高いのとか普通に有るしな。と言う事で早速」
『SP500を所費してスキル【鑑定Lv1】を習得』
「おぉ~!習得するとこんな感じなのか‼すぐに出も効果を確認していけど、ここは我慢して後で纏めて確認しよう。まずは残りのSPは9500。何のスキルにするかだな~面白そうなのはど・れ・か・な?」
彰吾はファンタジーで定番の鑑定は最初から取得する事を決めていたのか躊躇なく習得すると、すぐに次に何のスキルを習得するのか楽しくて仕方がないと言った様子で選び出す。
「ここは今後の事も考えて契約魔法はあった方がいいかな?種族単位で保護とか言われたけど、さすがに信用できないだろうし何かお互いに縛りがあった方が安心できるだろうし。他にはしばらくは1人の生活になるだろうし、便利そうな召喚魔法と人形創造。後は指揮やテレパシーに集団強化ってところか。とりあえず決めた分だけ習得‼」
『SP500を消費してスキル【契約魔法Lv1】を習得』
『SP600を消費してスキル【召喚魔法Lv1】を習得』
『SP1500を消費してスキル【人形創造Lv1】を習得』
『SP500を消費してスキル【指揮Lv1】を習得』
『SP800を消費してスキル【テレパシーLv1】を習得』
『SP500を消費してスキル【集団強化Lv1】を習得』
彰吾が決めた分だけでもとスキル習得を実行すると一気に習得のメッセージが表示された。さすがに個別で同時に出て来るとは予想できなかったのか、彰吾も少し驚いた表情を浮かべていた。
「…少し驚いたな。とりあえず残りは5600か、今度こそ面白い奴に全部つぎ込むか!えっと~5000以上の5600未満で俺の興味を引くスキルだと、傲慢が一番面白そうだよな。何と言ってもこれぞ定番!って感じで楽しそうだし、何故か怠惰は持ってたから大罪系をそろえてみたい欲望抑えられん‼と言う事で決定!問題があっても後で考えれば良し‼」
そう言うと彰吾は好奇心を押さえられずにスキルの習得を確定していた。
『SP5500を消費してユニークスキル【傲慢】を習得』
『ユニークスキル【傲慢】の習得を確認。称号 《傲慢なる者》を獲得』
スキルの習得と同時に何故か一緒に称号まで獲得してしまった彰吾だったが、予想できていたのか特に驚く事無く普通に受け入れていた。
「うん!無事に習得できたみたいだな。称号は怠惰を見た感じ何となくわかってたし、それよりも今はスキルの確認だな‼まず鑑定スキルだけど…この世界では使えるようになっているのか、それともハズレかまさにギャンブル‼」
ほとんどのSPを使い切った彰吾はついにスキルの効果の詳細を知ろうとしたが、一番最初に確認するのは鑑定だと決めていた。何故なら地球の創作物の中には最初から使える場合と、レベルを上げないと使えない場合の二つが主流だったので少し不安。と言うよりもこの世界では二つのうちどちらなのかと彰吾は興味があったのだ。
「さてっと、まずは適当に木の葉っぱにしよう」
そして彰吾は最初に鑑定する物を探して何となく目についた足元に落ちていた落ち葉を拾う。
「やっぱ最初はこういうのからだよな‼と言う事で、スキルってどう使えばいいんだろうか?」
なんだかんだここまで来てスキルの使用方を知らないと言う致命的な事実に気が付いた彰吾は本気で困った様子で考えてすぐに吹っ切れたような笑顔で顔を上げた。
「うんっ!分からない時はとにかく試すのみだよな。まずは声に出して『鑑定‼』」
無駄に元気よく彰吾が叫ぶのと同時に目の前にスキルの効果はすぐに表れた。
《鑑定結果:魔樹の葉》
《備考:魔力を多量に含んで変質した樹木の葉》
「おぉ~!普通に使える方だった‼」
その鑑定結果を確認した彰吾は思わず安心したのか楽しそうに笑顔を浮かべてそう言った。正直な話しここで鑑定スキルが使えなければ、彰吾の今後の行動はいろいろと手探りで確認しながらになる所だったのだ。
そんな事情もあって安心した様子の彰吾は満足げに大きく頷くと、すぐに次の事へと頭を切り替える。
「さてさて、鑑定スキルが使えると分かれば後はやる事は1つ!スキルの確認‼これしないとこの後どうしようもないしな」
まるで自分に言い聞かせるようにそう言った彰吾は小さく何度も頷くと、開いたままのステータス?画面へと集中して鑑定する。
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