第23話白馬の王子さま

主人公の能力、一つ抜かってました^^

●霊体であろうと不死であろうと全能であろうと敗れざる者であろうと神であろうと殺す事が出来る。


ひとまずは10万文字までは一日二話以上の更新を致します。


10万文字を超えると現在あるストックが無くなるまでは一日一話で更新致します。


他作品

転生悪役令嬢は闇の秘密結社を作る

使い魔を召喚したら魔王様のようです

ヴァンパイアの魔王異世界奮闘記


何卒^^




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「い、いつから気付いていたのですか?」

「そうですね、姉様が最近家に帰って来なくなった頃くらいですかね」


 そんな姉様が恐る恐るといった感じで私にいつ気付いたのか聞いてくる。

 ほんとは勘繰ってはいるがそれが何なのかまでは知らないのであるがこの姉様を騙す事など造作もない事である。


「そ、そうか。もう知っているのならば隠す必要もないですね」


 私がまだ真実を特定できていないとも知らずに姉様はまんまと、それもあっけなく私に今のお姉様の現状を教えてくれるみたいである。

 本当にたまにではあるがいつか悪い人に騙されないかと妹ながらに心配である。


「じ、実はだな、今私はクロード様のペットとしてお傍に置かしていただいているのです。この首輪はペットの証であり、さらにこの首輪に付けられている金色の板はテイムされている事の証でありご主人様であるクロード様の名前と私の名前が彫られているのですよ」

「そ、そうなんだ………姉様は幸せですか?」

「ええ、ご主人様のペットになれて幸せですね。でも最初の約束では奴隷にしてくれる約束だったのにペット止まりと言うのは多少………ほんの少しだけ不満ですかね。だからご主人様にいつか奴隷として格上げして頂けるように常に忠実な賢いペットとして振る舞っているのですよ」


 もはやドン引きである。

 まさか実の姉にこんな性癖があったなんて思いもよらなかった。

 しかもそれをとても幸せそうに語っている姉様の姿に今まで築き上げてきた姉様像が粉々になって行く。


 ド変態じゃん。


 そう思うも口に出すのをぐっと堪えて私はそのご主人様とやらを聞き出すことにする


「その、姉様のご主人様はどのような方なのでしょうか?また男性ですか?女性ですか?」

「だ、男性に決まっていますっ!私のすべてを捧げるお相手なのですよっ!?も、もちろん私の純潔も捧げるお相手なのですから女性であるはずがないでしょうっ!!そ、それに私はそのような趣味は持っていませんっ!!その事に関しては至って普通ですっ!!」


 普通って一体全体何だろうなーと目の前の姉様を見て思う。

 普通の女性が犬猫のように首輪を、さらにその首輪にはテイムモンスターよろしく証明書まで付けられてペットとして扱われる現状をこうも幸せそうに語りますか?と姉様に小一時間問い詰めたい衝動に駆られるのを何とか我慢する。


「ちなみにご主人様ですが私のピンチに颯爽と現れてはまるで物語のヒロインのように助けて頂いただけではなくヘレナの病気を治すことが出来たアイテム、不死の一滴を無償で譲って頂いたお方なんですっ!!」

 


え、それって本来であれば私の白馬のお王子様なんじゃないのか?何勝手に姉様が横から私の王子様を掻っ攫おうとしているのか、早急に説明をして頂きたい───と思うもこの姉様である。

 恐らく異性として思われていないであろう。

 

 その事に気付いた私は熱くなった頭を深呼吸する事により冷やし、冷静さを取り戻す。

 私は至って普通であり変態の考えなど分かるはずがないので何故お姉様の先ほどの言葉から考えるに奴隷として傍に使える事を懇願してるようなのだが今だその願いは叶わず私の王子様のペットとして飼われているようである。


 そこで私は一度白馬の王子様のペットとして可愛がられる日々を少し想像してみる。

 そのまだ見ぬ私の白馬の王子様とのペットライフを想像し羨ましい………なんて決して思わない。

 ええ、決して、少しも。

 これっぽっちも羨ましいなんて思わないのですが白馬の王子様が私をペットとして飼いたいと言うのであれば、嫌ではあるが仕方なく、そうこれは仕方なくペットとして飼われてあげても良いと思って入る。


 話を戻すとして今現在お姉様は奴隷でない事を鑑みるにまだ私の白馬の王子様はまともな性格でありお姉様はまだ私の白馬の王子様とそれほど、お姉様を奴隷にしてしまうほどの間柄ではないという事が伺える。

 まだお姉様の毒(性癖)が回りきっていないのだが、既にお姉様をペットにしている時点でそれも時間の問題であると思われる。


「ち、ちなみにそのお方は今どこにいらっしゃるんですか」


 時間が無い。

 この姉様もとい変態の毒が私の白馬の王子様の全身へといきわたる前に早急に何かしらの対策を取らなければならない。

 しかし対策を取ろうにも私の白馬の王子様が今何処にいるのかすら分からない為悔しいがどうする事も出来ない。

 そのため私は姉様に悟られぬよう慎重に、しかし直球かつ大胆に私の白馬の王子様の情報を引き出すことにする。


 喉は張り付き声は若干震えてしまったのだがまだ及第点だと思う。

 しかし姉様は変態ではあるが冒険者ランクSSSでもあるのだ。

 姉様に感づかれていないかと緊張感が襲い私の背中に大量の汗が噴き出してくる。


「あら、言ってなかったです?私のご主人様は帝都魔術学園に途中編入という形で学園に入り勉学に励んでいますから学年は違いますがヘレナが学園に戻ってくればもしかしたら会う事もあるかもしれませんね」

「姉様、私なんだか最近身体がすこぶる調子がいいんです。姉様と一緒に学園に戻りますね」

「え?いや、まだ病み上がりでしょう?無理をしてはいけませんよ」

 

 まったく、この姉様は普段は勘が鋭く頭も良く回る癖にこういう時に限って急に物分かりが悪くなるのだけは本当に、極稀に、万が一程度、シバキ回したくなるの辞めて頂きたい限りである。

 しかしこんな姉様故に今現段階では私の学園復帰は早くとも一か月後となり白馬の王子様とのロマンティックな出会いも紡がれるであろう恋愛ストーリーも一か月先延ばしになってしまうであろう。

 そこまでこの姉様の事を分析したところで私はまだ十二分に力が入らない足にありったけの力を込めてスクワットを始めて見せる。


「ほらっ! 姉様っ! 私はっ! こんなにもっ! 元気なんですよっ!」


 スクワット一回で最早足腰の筋肉は限界に達しており到底二回三回と続けてできるような身体ではないのだがそこは私の白馬の王子様との愛がなせる業であると言えよう。

 愛の前ではどんな障害であろうと乗り越えれるものなのである。


 ビキッ!!


「あぐぅっ!?」


 腰から鳴り響く鈍い音と共に訪れた激痛に私は思わず膝から崩れ落ち、無残にも倒れ伏す。


 巨星………墜つ……か。

 無念。


「ほら、無理をするからそうなるのです。分かったらちゃんと安静にしていなさい。いいですね?」


 そんな私を見た姉様はそら見た事かと若干の呆れからかため息を吐きながら安静するようにと真っ当な正論を言ってくる。


 これロジックハラスメントですからねっ! 姉様っ!


「ぐぬぬぬぬ………っ」


 しかし姉様の言っていることはやはり正論で、だからこそ言い返す言葉が見つけられる事も出来ずただただ悔しさを噛みしめ苦渋を味わう事しか今の腰がやられた私にはできなかった。





 ギルドの一室、その中でヒルデガルドは頭を下げ謝罪する。


「すみません、妹が心と体の乖離があるせいで身体が心について来れず軽い怪我をしてしまい、その看病の為少しながら遅れました」

「まあ遅れたと言っても何日も遅れたわけではなく数時間程ですし遅れる事についても事前連絡を入れてくれたおかげで何も迷惑は掛かってないですよ」


 通信魔石から少し焦った声音のヒルデガルドから一時は最悪の事態も考えたのだが、せっかくダーリンのおかげで不治の病が治った妹さんに大事が無いようで何よりだと少し安心する。


「ヒルデガルドも揃ったのでこれからの事、特に隣の王国、フレーン王国について話し合おうではないか」


 そして第三王女の言葉でこの一室に集まった面々は一気に緊張感が走る。

 その張り詰められた緊張感から本来であればこのような事はギルドの一室なので行うような内容ではない事が伺えて来る。


「一週間ほど前、フレーン王国から我が帝国へ宣戦布告の旨が通達された」



 たったその一言で部屋の温度が急激に下がったような感覚をヒルデガルドは感じ取る。

 それほどまでに王国との戦争は今この帝国においては無視できるできないのレベルではなく存続がかかった一大事である事が伺えてくる。


 そしてその大事な事案で皇帝陛下ではなく第三王女であるレミリア様が主軸となって話を進めている事により大まかではあるが今回の話の落としどころが見えてくる。


「して皇帝陛下はこの件についてなんと仰られておいでですか?」

「それについては私が話させて頂きます。皇帝陛下の現時点でのお考えでございますが、まず戦争は避けられないという事、そして王国側の開戦日時が一週間後である事、それにより今より兵を集め十全に開戦に備える事は難しく、また他国への援助も日数の関係で難しいとの事。これらを踏まえた上で今回帝国ギルドへ皇帝陛下から戦力の援助を要請させて頂いているというのが今現在の状況でございます」


 ギルド長であるドミニクの質問に帝都より派遣された諜報部所属第一隊隊長と書かれた老齢の、しかし老いを感じない雰囲気を漂わせている男性が自身のモノクルの位置を一回調整した後その問いに答える。


 前回の魔石騒動により王国との戦争という考えはあったものの、その考えに至る原因である魔石と魔獣は綺麗に片付いた事により王国の目論見は潰えた為今回は戦争まで発展しないであろうと楽観視していた。

 そのため国土が広い帝国は事前準備なく王国との戦争を突き付けられ今から戦争準備を始めるにしても到底一週間でできるようなものではなく頭を悩ませていた。


 今より100年前、この広い帝国を効率よく運営していくにあたって工業地区、農業地区と分けた事が今逆に自らの首を絞めている。

 というのもこの工業地区と農業地区であるのだが仮想敵である王国側とは正反対であり友好国でもある聖教国側に作られており仮想敵と戦争を想定した配置が生んだ結果とは何とも皮肉なものである。

 その為兵士だけならば一週間もあれば何とか必要人数を集める事が出来るのであるが武器や防具、食料や飲み水といったものはとてもではないが一週間で集まるものではない。


 さらにここ最近では地方の統制がただでさえ上手くいっておらず下手をすれば敵は王国だけではなく身内からも出てくる可能性も高い。

 そのため慎重に動かなければならないの為余計に即行動に移る事が出来ないのである。


「大きい者は動きが鈍いというのは動物も国も同じですな」


 そういうとドミニクは深いため息を吐き背もたれへ深く身体を沈める。


 

 





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