第4話 ズトラーストヴィチェ

朝学校に着くと美月と遥香がニコニコしながら近づいてきた。

「な、なに...?」

「あのね〜神社の子の名前分かったよ!!」

「顔も確認できたよ!写真見せてもらっただけだ

 けどね」

「「「イェーーーーーイ!!」」」

いつのまにかマサも一緒に喜んでいた。どこか某ジャスティスな芸人風に喜ぶ3人、朝から心臓に悪い。

「いや、その...昨日神社に寄ったら会ったんだよ

 ね...」

「「「えっ?」」」

3人はさっきの元気を無くし静かに自席に戻った。なんか悪いことしたな。

「おはよう!みんな、神社の子の名前分かっ

 た?」

何も知らない天道さんがみんなに聞く。

「うん、分かったよ...」

「...?なんで元気ないん?」

「うん色々あったのよ」

ずっとキョトンとしている天道さん

「結局どんな子やったん?」

すると元気を取り戻す美月と遥香

「夕立夏鈴ちゃんって言うんだって!」

「大人しそうな子ですっごく可愛かった!」

「へぇ〜今日会えるかな!」

女子はキャピキャピしてまさしく女子な感じに盛り上がっていた。

「颯は昨日あったんだろ?どう感じた?」

とたんに静かにこっちを見てくる3人。なんとなく目が怖い。

「どんな感じか...しっかりしてて真面目な子っぽ

 かったかな、巫女の2人に振り回されてる感じも

 あったけど」

なんとなく安堵の表情を見せる女子3人

「ほーん、巫女はどんな感じなの?美月もあった

 んだろ?」

「うん、何というか、変な人たちだよね?」

「そうだね、動物の耳つけてるしね」

これ耳隠さないといつかバレるんじゃないかな

「いいじゃん!猫耳女子とか可愛いし!」

変なテンションになるマサ、少し引いた目で見ている天道さんと遥香、携帯をいじり聞いてないフリをする美月、授業の準備をしながら聞いてないフリをする僕、どこから出したのか猫耳を手に持ち振ってつけてほしいアピールをする遥香の前歯を愛する会、略してHMA会もうこれからそう呼ぼう。僕はそっとドアを閉めた。

「まぁとりあえず今日みんなで行くの楽しみや

 ね!」

可愛い天道さんの一言でようやく場が和んだ。


結局授業が終わったらそのまま行く事になった。何を勘違いしてるのかマサは大量のお菓子を両手に抱えてウキウキしていた。


「じゃあそろそろ行く?」

「そうやね、あんまり暗くなっても困っちゃうしね!」

僕は夏鈴ちゃんに今から向かう事を連絡してみんなと共に神社に向かった。久しぶりに何人かとお出かけ、自分もちょっとワクワクしていた。


神社に着くとそのワクワクは心配に変わった。急に美月と遥香に質問攻めにあいオロオロしている

夏鈴ちゃん。琴子さんを見るや否や大量のお菓子を差し出し猛烈アプローチをするマサ、それを冷ややかな表情で見る琴子さん。そのカオスぶりを僕と一緒に見てる天道さんと好花さん。

「好花さん、夏鈴ちゃん助けなくていいの?」

「そうですね...まぁたまにはこう言うことも大事なんじゃないですか?」

多分ちょっと楽しんでるんだろう。ニヤニヤしてる。すると琴子さんが大量のお菓子を持ちながら困った表情でこっちにきた。

「お菓子は嬉しいけど、あの人疲れる...」

マサもこっちにきたところで好花さんがみんなに言った。

「皆さん!よければこの神社案内いたしましょうか?恋愛成就祈願の御守りもありますよ!」

「「「ぜひ!!!」」」

今までに見たことないくらい熱量の女子3人組。

「はぁ...助かりました...」

フラフラしながら歩いてきた。

「ごめんね、あの2人昔からあんな感じだから笑」

「いえいえ...この神社に興味を持っていただけるのは嬉しいことですから」

「真面目だね、いいところだと思うよ」

「そ、そんなことないですよ...!」

顔を抑えて下を向いてしまった。泣かせちゃったかな...

「夏鈴ちゃん照れてる」

「そうなの?」

「琴子さん!言わないでください!」

そうだったらしい

マサ、美月、遥香、天道さんの4人は好花さんに参拝の仕方を教えてもらってちょうどやっているところだった。すると隣にいた琴子さんがビクッとした。

「琴子さん、どうしたんです?」

「あの4人の願い事の熱量が凄くて...」

「そういえば颯さん、好花さんと琴子さんは人の   

 お願い事を視ることが出来るんです。」

「ということは?」

「多分あの4名の願いが物凄く大変なものか大量

 なのかと...」

たしかによく見ると4人の手が震えるほど力強く願っている。4人の隣にいる好花さんは開いた口が塞がらないようだ。

4人が戻ってきた時に好花さんに聞いてみた。

「あの4人何お願いしてたんです?」

「人のお願い聞こうとするなんていけませんよ!でもマサさんのお願いくらいなら教えますよ」


教えちゃうんだ、かわいそうなマサ


「琴子さんと手をつなげますように、琴子さんと

 いい関係になりますように、琴子さんが笑って

 くれますように、琴子さんと食事にいけますよ

 うに、あとはえーと...」

「もういいです。聞いてるこっちが辛いので」

前言撤回、かわいそうでもなんでもない。どうしようもないな。


結局4人は参拝が済んだら帰ってしまった。

「みんなごめんね、騒がしくしちゃって」

「いえいえ!油揚げも大量に貰えたのでよかった

 です!楽しかったですしまたきて欲しいで

 す!」

「今度は女の子だけにしてね...」

琴子さんにとってマサはトラウマになってしまったようだ。しかたないことだ。願いも本人に筒抜けと考えたら余計に、

「なんかお姉ちゃんができたみたいでした、また呼んでくださいね」

「そう言ってくれると助かるよ。ありがとう」

夏鈴ちゃんは慣れてきたようだ。よかったよかった。

「じゃあ僕もそろそろ帰るね」

「はい、明日もまたきてくれますか?」

「うーん...そうだねまだ油揚げのストックはあるだろうけど、来ると思うよ」

「わかりました、それじゃまた明日!」

「うん、じゃあね」

「油揚げの追加、大歓迎ですからね!」

「ばいばーい」

神社から出ると遥香がいた

「あれ?先に帰ったんじゃなかったの?」

「うん、忘れ物したから取りに来たの、ついでに颯もいたから一緒に帰ろうかなと思ってね」

「そっか、じゃあ帰ろうか」

忘れ物があったようには感じなかったが、まぁ気にしなくていいか。


「それにしてもびっくりしたね好花ちゃん」

「ですね...琴子さん、まさかあの3人も颯さんが好

 きだとは...」

「5円さんどうするのかな、」

「分からないですけど...これは2人だけの秘密です

 ね」

「うん、そうだね〜よしお菓子食べよ好花ちゃ

 ん」

「はい!マサさんからいただいたやつですね!」

「もう来て欲しくないなぁ...」

「1番お願いしてましたもんね...笑流石に叶えきれ

 ません...」

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