第2話 るーるるる?

朝学校に行く途中、昨日の神社に寄ってみた。

狐の像はしっかりこっちを見ている。「恋愛成就」の、のぼりの横に「商売繁盛!1回1000円!」の

のぼりが増えていた。本当に神社なのだろうか

 ふと腕時計を見ると遅刻ギリギリの時間になっていた。

帰りにもう一回寄ることを決め学校に走り出した。


学校に着くとマサが黒髪に戻っていることに気づく。

「おはよう、結局髪戻したの?」

「よっ、黒くしないとスキンにするぞって言ってきたからな!仕方ねぇよ笑」

「でもマサの茶髪似合ってたなぁ...笑」

「おっ!嬉しいこと言ってくれるなぁ遥香!」

「女子の間で少し話題になってたよ?本当に少しだけかっこいい風に見えなくもなかったって!」

「美月、それ全然嬉しく思えないから」

悪い笑顔を見せる美月、苦笑いのマサ、 大爆笑の遥香、その後ろで教室の外から遥香の笑顔を見て悶え苦しむ「遥香の前歯を愛する会」教室の外だけ異常な状況だ。とりあえず開いていた教室のドアを閉めた。あとで詰められそうだな...ドアを閉めたタイミングで担任の三木が入ってきた。助かった...

授業を終え帰るときに美月に声をかけられた。

「ねぇ、颯、今日この後暇?」

「うん、まぁたいした用事はないかな」

「じゃあ一緒に帰ろ!寄りたいところもあるし」

カバンを引っ張られ転びそうになったが仕方ない何かに夢中になると周りが見えなくなる癖は治らないようだ。

「てか美月?どこ行くの?」

「ん〜?恋愛成就の神社!」

「それってうちまでの帰り道にあるやつ?」

「えっ、知ってんの?」

「昨日行ってみたからね、有名なの?」

「超有名だよ!いつ現れたか分からないけど効果 

 は抜群って!」

そうなのか、知らなかった...その割には全然人いなかった気がする。

「混んでたら嫌だから早く行くよ!」

美月のスピードが上がった。どんだけ好きなんだ...

ついて周りを見ると全く人がいなかった。

「全くいない...なんで...」

「分からないけど巫女が変な人だからじゃない?」

「誰が変な人ですか!」

後ろを見ると昨日の2人の巫女が立っていた

「今ので心が傷ついたので慰謝料1万円を要求し 

 ます」

「流石にそれは要求しすぎですよ。琴子さん」

「...誰?この人たち...」

美月も困惑している。だか困ったことに説明できない。2人共何者かよく分からないからだ。

「俺もよくわからないんだけど...多分巫女?」

「はい!巫女ですよ!昨日は賽銭ありがとうござ 

 います!」

「たった5円...」

「そんなこと言わないの!」

相変わらずドタバタな感じだ。

「あの、ここって本当に恋愛成就の神社なんですか?」

「はい!もちろんなんでも叶えますとも!た   

 だ...」

「ただ?」

「お金はかかります。物によっては1万円以上」

「そんなまさか...笑」

2人とも真顔でこっちを見てくる。マジなのか

「た、例えば1000円なら何を叶えてもらえるんで

 すか?」

「そうですね...本屋で手が触れ合うとかですか

 ね」

「たった5円なら、帰り道偶然会うとか」

「え、じゃあ昨日のは」

「はい!叶えました!5円分!」

にわかに信じがたいが実際起きたことだからなぁ...

「うーん1000円...」

「美月どうしたの?めちゃくちゃ悩んでるけど」

「ううん!何でもない!何でもないよ...そろそろ

 私帰るね!明日色々な子にここ宣伝する為に

 色々まとめてみる!」

「ありがとうございます!」

「お金いっぱい落させてくださいね」

酷い返しだ

「わかった、じゃあ俺はもう少しここにいるよ。

 じゃあね」

「うん、ばいばい!また明日ね!」

美月が帰ると僕は昨日から気になっていたことを聞いた。

「ところでずっと聞きたかったんですけど、その

 耳は...あと昨日帰るときに狐の像が消えてたん

 ですけど...」

2人は顔を見合わせている。

「言いづらいことなら別に...」

「いえ、大丈夫です。ただ教えるのでその対価を

 払ってほしいです。秘密として話さないで欲し

 いですし...」

「...ちなみに対価とは?」

「油揚げです」

「はい?」

「私たち狐なので、本当はここの巫女ではないん

 です。」

「えーと...何を言っt...」

こちらが聞く前に2人は目の前で狐の姿に変わった

「改めて自己紹介をさせていただきます。私はこ

 の神社の巫女代わり甘雨好花。こっちは狐の先

 輩で同じくこの神社の巫女代わり氷雨琴子さ

 ん」

「よろしくね、5円さん」

「5円さんって呼ばないでください。ただでさえ困

 惑してるんですから」

「まぁそうですよね...笑、でも一応許可は得てこ

 こに住んでるので!だから黙っててください私

 が狐ってこと...バレたらめんどくさいので」

ずっと混乱しているが、知ってしまった以上黙っておくしかない。多分言っても信用されないだろうけど...

「あと...対価の方もお願いします...」

「えっ、対価って油揚げ...?」

「はい!狐と言えばですしね!食事は自給自足す

 る事がここに住む条件だったので最近何も食べ

 れてなくて...」

「お願いしまーす」

キラキラした目でこちらに手を差し出してくる。

「と、とりあえず明日!明日持ってくるので!」

「分かりました!絶対ですよ!絶対に持ってきて

 くださいね!!」

「持ってこなかったら、人にどんどん嫌われてい

 く呪いをかけます」

怖いなこの人、いやこの狐?

とりあえずその日は帰らせてもらった。

改めて考えるとこの2日間すごい濃かった。

転校生、狐の巫女がいる神社...何か関係があるのか多分偶然なんだろうけど、なんとなく今までの日常が変わっていきそうでワクワクしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る