オリジナル小説(妄想の塊)

風のレッサー風太

第1話 キツネにつままれて

夏休み明け1発目の登校日、久々に会う友人たちは黒くなった者、髪型がガラッと変わった者など様々なイメチェンをしている。

それを見ている僕は、全く変わらない冴えない感じ、だるいなと思いながらとぼとぼ歩く廊下は無限に続いているような感覚になる。


「相変わらず暗い顔してんなぁ、ちったぁイメチェンでもしたらどうだ?」


そう言ってきたのは、小学校からの友人である澤田正彰、いつも「マサ」と呼ぶは彼は髪の色を茶髪にしていた。高校の校則でも禁止されている染髪を率先してやってくるあたり昔から変わらない

「校則違反してまで変わるつもりはないの、まぁ確かにこのままなのもどうかと思うけどさ」

「いいんだよ、少しくらい!校則とかってのは破るためにあるって聞いたことないのか?」

「ほう...誰が言ったか知らんがそんな事を言った奴がいるのか、俺にも教えてくれよ、生徒指導室でな!」

「げっ!ジャイアン!」

マサの後ろに立つ動物園から脱走したゴリラのような体格の男、ジャイアンこと家庭科教員の剛田武蔵、

とぼとぼと生徒指導室に歩いていくマサ、何をしているんだか、そんな事を思っているとチャイムが鳴った、初日から遅刻扱いは困るので急いで教室に行く。


「オラー座れー全員遅刻にするぞ〜」

担任の三木辰馬、基本的にやる気がなさそうな彼は夏休み明けでも黒くなった感じもなく全く変わらない。少し安心する。ちなみにこの「オラー」はスペイン語の方の「オラー」である。

「はい、今日はラノベの展開の様に転校生を紹介する。入ってきて〜」

静かに扉が開き入ってきた女子に目を疑った。

本当にこんな事あるんだと思うほどに可愛かった。

「天道菜緒です。大阪から来ました。よろしくお願いします...」

深々とお辞儀をする彼女、やばいなぁ...可愛すぎる。

「ねぇねぇ、転校生可愛くない?」

声を掛けてきたのは後ろの席の朔美月、彼女もマサと同じく小学校からの付き合いだ。色恋沙汰に目がない。

「あー確かに可愛いね」

「なーに冷静ぶってるの笑、顔少し赤いよ?笑」

「そんな事ないです〜」

そう言いながら少し顔が熱いことに気づく。

「なに?好きになっちゃった?一目惚れしちゃった?笑」

煽ってくるのは美月の横の席の朝東風遥香、同じく小学校からの付き合いだ。

どんだけ小学校からの付き合いのやつが多いんだと思う。

「そんなことないよ、一目惚れなんてするわけないでしょ?少女漫画の読みすぎ」

どうやら僕は一目惚れした様だ。

「ほら、そこうるさいぞ、じゃあ天道さんあそこのうるさいグループの眼鏡の横の席に座って」

「ちゃんと名前で呼んでくださいよ...!」

めちゃくちゃ嬉しい気持ちを押し殺して平然を装う。

「これからよろしくね?えーと...」

「あ、僕は天宮颯、よろしく」

「よろしく!天宮君!」

「俺、澤田正彰!マサって呼ばれてるよろしく」

「お前いつ戻ってきたんだよ...」

いつのまにかジャイアンに連れて行かれたマサが俺の前の席に座っていた。

「私、朝東風遥香!苗字が難しいから遥香って呼んで!」

「私は、朔美月、なんて呼んでくれてもいいよ!ここの4人は小学校から一緒なんだ〜」

「そうなの!?すごいね!」

流石女子同士仲良くなるやり方を知ってる。羨ましい。結局その日は美月と遥香に天道さんを取られて全く話せないまま1日が終わってしまった。


放課後1人で帰ってる時ずっと考えていた。

どうすれば仲良くなれるか、あんなに可愛い子今までに見たことない。完全に惚れていた僕がどうするか考えていると見覚えのない小さな鳥居が見えた。

(こんなところに神社なんてあったっけな...?)

まだ明るかったので寄ってみると古くボロボロな本殿とその前に置いてある2匹の狐の像、それとのぼりが一つ「恋愛成就!」

こんな宣伝する神社は見たことがない。

まぁ来たついでに天道さんと恋人になれますようにと叶いそうもないことを願う。

家に帰ろうと振り向くと1人の長い髪の巫女がこちらを見ていた。

(あれは...猫耳?にしては長いか)

「えーと...この神社の人...ですよね?」

「たった五円だけですか?」

「えっ?」

「たった五円だけなんですか?もっとくれてもいいですよ?」

こんなに金を落とせと言う巫女初めて見た。

煩悩の塊のような発言だな...

すると遠くから走ってくる音がする。

「ちょっとちょっと!来てくださったのにそれはダメですよー!」

同じく猫耳のようなものをつけた髪の短い巫女が来た。なんだこの神社...

「すみません!うちの者が...あ、お返しに今度恋愛の相談でも受けるので!今日は許してください!」そう言って長い髪の巫女を引っ張ってそそくさと走っていってしまった。

頭が追い付かないのでとりあえず帰る事にした。

元の道に戻るとそこには天道さんがいた。

「あれ?天道さん?今帰り?」

「あ、天宮君!うん、学校見学してたから、そうだ!よかったら一緒に帰らない?今日あまり話せなかったし!」

「も、もちろん!帰ろう!」

早速願いが通じたのだろうか、また来ようこれから毎日来よう。変なところだけど効果はありそうだ!

振り向くと、2匹の狐の像がなくなっていた。

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