無題5より「神像夢虚」
長いトンネルを抜けると其処には群青色のワイングラスが鎮座していた。それはグラスの中の目玉の尾を泳がせながら、「私の鼻を掻いてくれるか。」
右手に持っていた葡萄酒を並並と群青に注ぐ。私は水になってしまった。
母は言ったんだ。「死してなお己の妄想を働かせるものの世界は夢であり仮面を被った気である」と処刑台の上で目を大きく見開き。
父は亡くなったんだ、荷馬車に惹かれて。
私は水だ、無味無臭、透明の。
灰色の空、それは煙突のアトシマツの軍隊なのかもしれない。
Please give me a job.の札を抱えた革靴の若者の行進、股の爛れた売春婦たちの爪垢。
蜘蛛が忍び寄ってきた。「これは中央値だ!平均値を執れ!」と貴族のお偉い方。
それでも太陽は顔を出してくれません。恥ずかしがり屋なんでしょう。私は蒸発せずに済みました。
王冠を被った浮浪者が一人、私に王冠を叩き付けた。私の体は鳳仙花の種子のように飛び散り粉粉になっていました。
私が沢山いました。それは意識の断片かもしれないですが。
私は、私は、私は。
思考が私と私と私と................(以下省略)私に何重にも交差します。
まるで小蝿の雑沓です。
ァア、ァア、ァア。
愚かな者よ、其れを罪と知れ。
静寂な眼で虚無を見つめんと。
金属の天を枯らして、
執拗に追う者は何者か。
点綴する水滴に、
私を持たせ、
竢つ記録の中の、
多量の空想と知れ。
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