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 冬になり、貴方は正式に即位をしました。

 鬼人の血を持つ初めての王です。

 

「鬼人が王座を乗っ取った」


 まるで貴方が無理やり王位を簒奪したかのように。

 あたかも馬鹿げた内乱が貴方の陰謀だったかのように。

 陰口が流されました。


「余は望んで王位に就いた訳じゃないのに、妙な話だ」


 貴方は自嘲気味に呟くと寝所に横になりました。


「姉様、今日も一緒に寝てくれますね」

「陛下。ここではカクムと」

「カクム姉様」

「ただのカクムでございます」


 そして私も横になるのです。

  

「夜伽は出来ませぬよ」

「姉様!」


 貴方は真っ赤になって私を睨み付け、私の表情を見て、顔をしかめます。


「僕をからかったね」

「姉様と呼ぶからですよ、陛下」


 貴方が望むことすべてに私は応えましょう。

 私は誓いました。

 あの雪の日に小さな手を握りしめて、貴方の全てを護ると。


「彼らはあまりにも脆い。僕たちが護らないと」


 眠りに落ちる直前、貴方の呟きが聞こえました。

 約定に従い、聖地で静かに生きてきた我ら。

 それは我らから弱き者を護るためでもありました。


 力の違いは不幸を生みます。

 ですが私も護りましょう。貴方が護ると決めたものも全て。

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