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「殿下、お初にお目に掛かります」
王宮で出迎えたのは貴方の夫になる予定だった子爵でした。
王配として権勢を振るうことを夢見ていたのでしょう。
その表情には露骨な失望が浮かんでいました。
「子爵。私をよく助けてくれるようお願いする」
「勿論です。殿下」
子爵の視線がまるで貴方を値踏みでもするかのように、上から下まで動きました。
「わが永遠の忠誠を殿下に」
「ありがとう」
上っ面だけの言葉に、貴方の眉間に皺が寄ります。
「して殿下、この者は?」
「私の姉です。姉様、子爵へご挨拶を」
「コゴミ殿下の異父姉となりますカクムでございます。近侍を務めさせていただきます」
子爵は私の挨拶に返事もせずに貴方に話しかけました。
「近侍は女性では務まりません。すぐにでも私が信頼を寄せるものをご紹介しましょう」
「お気持ちはありがたいですが結構です。姉様はこう見えても強いですし、護衛としても問題ありません」
「そうですか」
貴方の答えは気に入らなかったようですね。
「王宮勤めをする鬼人……失礼、聖域の一族では民に悪い印象を与えますぞ。どうか、お考え直しを」
「私の血の半分も鬼人です。であるなら、私では王位に相応しくないですね。私は喜んで帰りましょう」
貴方の眉間の皺が益々深くなりました。
その言葉に私たちを案内してきた内宮長が慌てます。
「ま、待ってください。子爵! 王統はコゴミ殿下しかおりません。どうか、ここは殿下の我が儘を聞いて下さい」
「解りました。これでも宮仕えの身です。殿下のご要望通りにしましょう。でも、その女だけです。あとはこちらで決めさせていただきます」
そう言い残し、子爵は立ち去りました。
「姉様、不快な思いをさせてごめん」
「陛下、ここではカクムと」
「ここには味方がいない。だから姉様だけは……」
「わかりました。私は……ですが一族は常に陛下とともにあります」
「そうだね。ありがとう」
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