05/クビキリ

あかいネコに、ナマエをきかれた。

だからこたえた。


「クビキリ!!」

「・・・まじで?」

「クビキリ!皆そう呼んでた!」

元気良くそう答える子供に、赤猫は言葉を失くす。

「―…まぁた…マスターは、スゴいの拾って来たなぁ。」

赤猫の目の前でファーストフードを貪り食っている子供は、今日ファズが新しく拾ってきた「メンバー」であるらしい。

その無邪気さと不吉な名前が、この上なく物騒だった。

その物騒さを、傍らに無造作に置かれている「相棒」が更に引き立てている。

どう見ても、斧。

それも重量級。

「お前、それ、使えんの?」

「?ドゥルス!触っちゃだめ。」

赤猫の視線から守るように斧を身で隠す。

相当大切な物なのだろう。

「ああ、触りゃしねーよ。でもかなりでけぇじゃんそれ、お前に扱えんのかなーって。」

クビキリは随分と小柄だ。

年齢を考慮したって、平均より小さいように見える。

対して、その斧―ドゥルスは重量級だ。

赤猫でさえ振り回すには難がありそうな大きさで、随分と凶悪に見える。

「別に重くないよー。」

触らない、と聞いた瞬間に、それまでの警戒心が嘘の様にハンバーガーをかじり続けるクビキリ。

「ふーん。・・・かっけーな、お前の斧。」

「へへ・・・でしょ。ドゥルス!」

相棒を褒められて我事の様に破顔するクビキリの頭を一撫でして立ち上がる赤猫。

部屋を出ようとしたところで、丁度カフスがやってきた。

「よう。お前もう会ってる?そのガキ。」

「ガキ?ぁあ、ファズが拾ってきたっていう?まだ。何、此処に居んの?」

赤猫の影から首を伸ばして室内を探るカフス。

目が合ったクビキリは飛び上がるように身を竦ませた後、食事を中断してぐいっと力強く口元を拭った。

そわそわと居住まいを正す。

「?あいつか。」

「・・・。そ。あいつ。挨拶してやれば?」

何とも言えない視線でクビキリとカフスを見比べてから、赤猫はそう言って肩を竦めた。

「お前が道を踏み外さねー事を祈ってるよ。」

「ぁ?」

そうして。

大きな斧を振り回すクビキリと呼ばれた子供は、運命的な一目惚れをしてしまったらしかった。

「・・・ぁ?」

それは、カフスの受難の幕開けでもあるのだった…。

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