第46話

「さて……これからどうするよ?」


 頭から離れたクロウの手を少し名残惜しそうに見つめた後、カチュアはそっと自分の足を擦ってみた。目が覚めた時ほどではないものの、まだ少し痛みはある。我慢すれば歩けない事はなさそうだ。


「ん……ボクとしては救助が来るかどうか分からないところでじっとしているよりも、出口を探したいんだけど……クロウは?」

「そうだな、俺もその方が良いと思う」

「んじゃ、決まりだね!」


 そう言ってカチュアはニパっと笑うと立ち上がり、水辺へと向かい歩き始めた。一緒に流れ着いた装備のうち使えそうなものを確認するためだ。


「カチュア? 足、どうかしたのか?」


 僅かに足を引き摺りながら歩くカチュアに追いつき、その顔を覗きこむクロウにカチュアは少しバツが悪そうに笑って見せた。


「あー……どこかにぶつけちゃったみたいでさー。でも大丈夫! 歩けないって訳じゃないから!」


 その言葉にクロウは眉間に皺を寄せると首を横に振った。


「ダメだ。そんな状態で出口があるかどうかも分からんのに歩き回って悪化したらどうする!?」

「大丈夫だってば! クロウは心配しすぎだよ! ほら!」


 地団太を踏むように痛めた方の足で地面を叩き、想定以上の痛みに顔を引きつらせながら大粒の汗を浮かべるカチュアにクロウは溜息を吐き出し再び首を振る。


「そんな調子で歩けるわけないだろ!? 予定は変更、ここで救助を待とう」

「だぁかぁらぁ! 大丈夫だってば! もういい! ボクだけで出口を探すから!」


 肩を怒らせながらクロウに背を向け威勢よくズンズンと歩き出したカチュアだったのだが、痛みを堪え切れなかったのか暫く歩くとその場に蹲ってしまった。カチュアのそんな様子を見ながらクロウは頭をガリガリと掻き、もう一度溜息を吐き出し彼女の前に回りこむと背を向けてしゃがみこんだ。


「っとにこの頑固者が!」

「……クロウには言われたくない……」


 頬を膨らませながらも素直に背に負ぶさるカチュアにばれないように苦笑いを浮かべたクロウは立ち上がり水辺へと戻ると、カチュアの指示に従い僅かばかりの使える装備をかき集め出口を探すために歩き出した。

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