第40話
ちょっとしたトラブルはあったものの、ベプの街を出発したクロウ達は本来の目的地であるキャランベを目指していた。今回クロウは先行せずに馬車に同乗している。というのも温泉から出てきた彼の顔色が誰もが心配するほど悪かったからだ。さすがにアーヴィングもこんな状態のクロウに斥候を命じるほど鬼ではないらしい。クロウがこんな状態になったのは彼が覗き穴の先で見てしまった光景が原因なのだが、一体何を見てしまったのかはジェイドも知らない。クロウが合流した時にジェイドはもちろん覗いた感想を聞いたのだが、クロウから返ってきたのは「聞くな」のただ一言のみ。それ以降クロウは一切口を開かなかったからだ。
場車内の重苦しい雰囲気に耐え切れなくなったのか、シャルローネは御者台へと移動するとアーヴィングの隣に腰を降ろした。さほど広くない御者台に移ってきたシャルローネにアーヴィングが迷惑そうな視線と共に地図を手渡すと、彼女は鼻歌交じりに地図を広げる。キャランベに向かうルートは二つ。安全を最優先に四日かけて街道を進むルートと危険だが二日で済む最短距離を通るルートだ。
「それで、どっちの道を進むんだい? アーヴィング先生?」
「街道を行くしかないだろう?
横目で見てくるシャルローネにアーヴィングは声をひそめながらそう返すと、場車内を一瞥する。当初の予定では最短距離であるヤニタ峡谷を通るつもりだったのだが、皇女であるアンネが同行しているのだから危険地帯は避けるべきだと判断したアーヴィングと彼の言葉に頷くシャルローネ。しかし、結局危険なヤニタ峡谷を通る事になるとは、この時は思ってもいなかった。
「なに!? 橋が落ちてるだと!?」
「ええ。おかげで取引が
アーヴィングの言葉にガックリと肩を落としながら答えたのは湖のほとりで先に野営を行っていた商人だ。彼の話によると街道の途中にある橋が落ちているとの事だった。それが人為的なものなのか、自然的なものなのかは判断できないが、とにかく橋が通れない事は間違いないらしい。またしても狂ってしまった予定に頭をガリガリと掻きながらアーヴィングは視線をシャルローネへと向けると、彼女は眉間に皺を寄せ何かを考え込んでいた。
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