第37話
「サハリン、勝手にウロウロするんじゃない!」
「すいませぇん……」
合流したクロウとエリスへのアーヴィングの第一声に縮こまりながら頭を下げるエリスを横目にクロウは店員から渡されたメニュー表に目を通す。食料の手配は済んだものの、それが手元に届くまでにはまだ時間がかかるらしく、少し早めの昼食を摂る事になったのだ。
「
クスクスと笑いながら昔の事を引っ張り出してきたシャルローネにクロウはキラリと目を光らせその視線をメニュー表からシャルローネへと移した。
「へぇー。
クロウの問いにシャルローネは頷きチラリとアーヴィングに視線を向ける。どうやら彼はエリスへの説教に夢中でクロウ達の会話は耳に入っていないようだ。これ幸いとばかりにシャルローネはちょいちょいっと手招きするとエリスとアーヴィング以外の面子が彼女へと近づく。
「
クロウ達がシャルローネに頷くと彼女はほんの少しだけ寂しそうに笑い、話を続けた。
「ま、その傭兵団はもう解散しちまったんだけど、アタシがアイツと知り合ったのはその傭兵団がきっかけでね。確かあれは皇帝から直々の依頼を受けるために登城してた団長に無理矢理連れてこられてたんだっけ……」
そう言って懐かしそうに目を細め、シャルローネは水の入ったグラスに手を伸ばすと喉を潤す。
「皇帝からの依頼かぁ。その傭兵団って凄いんだね」
運ばれてきた料理に手をつけながらそう聞いてきたカチュアにシャルローネはクスリと微笑むと人差し指を自分の唇に当てた。
「それだけ実力があったのも確かだけど、それ以外にも理由はあるのさ。詳しくは言えないけどね。……そうそう、その依頼を完遂して、傭兵団はたんまりと報酬を貰ったんだ。報酬は他の団員達と山分けするんだけどさ、ある男は貰った報酬のほとんどを使って、この街で一つの宝石を買ったんだ。それでね、その傭兵団はこの街の温泉宿に泊まる事になったんだけど、その男は酔っ払って浴場の壁に大きな穴を開けちまったんだ。当然宿の主人はカンカン、団長も呆れ果てて修理の費用はその男一人で払うことになったんだけど、男は現金を持ってない。しかたなく男は金を作るために買ったばかりの宝石を手放す事になるわけ。ところが、ここで大きな問題が起きちまった。なんと、買った宝石はよく出来た偽物だったのさ。その傭兵団にはたまたま実家が宝石商って男が居て、ソイツが偽物だってのに気付いてね。その男は顔面蒼白になりながら宝石を売っていた商人を探したんだけど、とっくに逃げ出してて、結局捕まえる事が出来ずにその男に残ったのは壁の修理費用を肩代わりしてくれた人物への借金のみってわけさ。ま、その男ってのが誰なのかは本人の名誉のためにも言わないけどね」
全員に視線を向けられたアーヴィングは説教を中断し不思議そうに首を傾げる。確かに名前は言っていないがバレバレである。
「ねぇ、
アンネの質問に微笑を返すシャルローネの胸元では真っ赤な宝石を着けた首飾りが光を受けてキラキラと輝いていた。
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