第14話
対面から睨みつけてくるアーヴィングの視線を意にも介さず、女性はスラリとした長い足を組むとゆっくりと口を開いた。
「さて、カルータスの森の事なんだけどねぇ、
だからね、と女性は一度そこで言葉を切るとチラリとその視線を学長へと向けた。
「状況を再現する為に、関係者を全員もう一度カルータスの森へ派遣してくれないかい?」
「ふざけるな!」
女性の言葉に学長が返答するよりも先に、アーヴィングはテーブルを叩き大声を上げる。
「何が起こるかわからない場所に子供達を送り込めるわけが無いだろう!」
「アンタには聞いてないよ、アーヴィング。それに、アンタに決定権はないだろう?」
「それでもだ!」
テーブルを挟んで険悪な雰囲気になりつつある二人に、学長はそっと息を吐き出すと徐に立ち上がった。
「シャルローネ殿、貴女の仰るように状況を再現する必要はあるかもしれませんな」
「学長!?」
目を見開き興奮気味に立ち上がったアーヴィングを学長は片手を挙げて制する。
「しかし、いくら戦う術を持つとはいえ、まだ学生である若者達にもう一度危険な場所に行け等と私には言えませんし、貴女にもそれを命令する権利は無い。そこでどうでしょう? 一度帝都に戻られて皇帝陛下のご判断を仰ぐというのは?」
ようするに全ての判断を皇帝に丸投げしようという学長の顔をシャルローネと呼ばれた女性は一度じっと見据えると、その視線をアーヴィングへと向けた。
「アンタもそれでいいかい?」
話を振られたアーヴィングはドッカリとソファーに腰を落とすと、がりがりと頭を掻く。
「……陛下への説明には俺も同行させろ。お前だけじゃ何を言い出すかわからんからな」
「信用ないねぇ……」
肩を落とすシャルローネにアーヴィングはフンッと鼻を鳴らすと、再び口を開いた。
「もう一つ条件……いや、頼みがある。生徒を数人連れて行きてぇ」
「それは……アタシは構わないけど、学長さんはどうなんだい?」
「ふむ、さすがにそれは……」
アーヴィングの提案に難色を示す学長だったが、最終的には渋々ながらも条件付で許可を出し、五日後帝都に向け出発する事が決まった。
シャルローネが学院に来訪したその日の深夜。
ビルポケットのあまり治安の良くない区画にある、人相の悪い男達や扇情的な服装をした女達が屯する寂れた酒場。
乱暴に開けられたその扉に一同の視線が集まる中、姿を見せた大柄で隻眼の男は肩に担いでいた麻袋を店の中央にあるテーブルの上に置くと男達を見回し、麻袋の口を開け中から大量の札束を取り出していく。
「おめえら、仕事だ!!」
隻眼の男の言葉に上がる歓声を聞きながら、隻眼の男はニヤリと口の端を持ち上げるのだった。
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