第11話 キミに電撃!!

それは、3人の生活が始まったばかりの頃。


新領主として、近隣の領主や地元の名士にあいさつ回りのため、タムラがまる1日屋敷を空けたことがあった。

「帰ってくるの遅くなるから。今日はルイスのお風呂、頼めるかな?」

「承りました。いってらっしゃいませ、タムラ様。」

「た、たむら、いって、らったい・・・。」

「うん、行ってくるよ、ルイス。・・・いい子にしてるんだよ?」



・・・で、1日中、車でリュウト領内を駆けずり回り、どうにか挨拶周りを終えて、夜更けに屋敷に帰ってくると。


「ただいまー・・・・・・って、ルイス!?」

「たむらああああ!うええええええん!」

玄関には、全裸で号泣するルイス。

「ど、どうしたのルイス!?身体びしょびしょじゃないか?」

ルイスの身体からは、湯気が立っていた。

「ひっく、ひっく・・・オゼが、オゼが・・・!」

「オゼに何かあったの?・・・まさか、陸軍の連中か!?」

―――ルイスをさらいに、屋敷を襲いに来たのかもしれない。


『最悪の状況』を想像したタムラは、一目散に風呂場へ向かった。


すると。

「オゼ! どうしたの―――えっ!?」

そこには、全裸のオゼが倒れていた。

「も、申し訳ありません、タムラ様。ルイスの体を洗っていた際、私の手がルイスのお腹の『石』に触れて、そうしたら・・・」


猛烈な電撃!

蒼いイナヅマがオゼの全身を駆け巡り、しびれて動けなくなってしまった――とのこと。


「あ、はは、びっくりした・・・。」


「大変恐縮ですが、私を、私の寝室まで運んでいただけますでしょうか? ・・・あ、あと、できれば、あまり裸は見ないでください。」


風呂場の床の上で、そのふくよかな胸や脚を手で隠すこともできずに、頬を赤らめ、素裸で仰向けに転がるオゼ。年頃の男なら、誰もが見とれることだろう。


しかし、タムラは、


「・・・うん、大丈夫!絶対に見ないから、安心して!」

と言って、動揺も照れもぜず、顔色ひとつ変えぬまま、オゼをお姫様抱っこした。

「はあ・・・。」

「ん?なんで、ため息なんかつくの?」

「いえ、なんでもありません。では、よろしくお願いします。・・・へっくしゅん!」


――結局、オゼはその日から三日三晩、体の痺れが消えず、まともに家事がこなせなかった。特に、料理に至っては、調理器具を持つ手が小刻みに震えるせいで、包丁を持つと自動的にみじん切りとなり、お玉ですくったスープはあっという間に床へ。トーストすら焼ける状態ではなかった。




「不思議ですね。タムラ様が触っても何ともないのに。・・・ああ、話が逸れてしまいましたが、変質者云々を抜きにしても、これ以上ルイスを甘やかすのは良くないです。もっと自分でやらせるようにしないと。」

「わ、わかったよ、もう…。」

しぶしぶと了承するタムラ。


と、そこに、先ほど寝付いたはずのルイスがやってきた。


「たむらぁ~~、おばけでるのー!!こわいのぉぉ~!おしっこー!うぇ゛ええええん・・・」

ルイスの寝間着はぐっしょりと濡れていた。

「あちゃー。寝つきがわるかったんだね。よしよし、今替えのパンツ持ってきてあげるから。一緒にお着換えしよ、ね?」


タムラはルイスを連れて寝室へと戻っていく。



その後ろ姿を見て、ため息を漏らすオゼであった。

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