第10話 おまわりさん!このひとですっ!!(H scene)

「さすがにちょっと、・・・お世話が過ぎませんか?」


ルイスを寝かしつけ、寝る前にワインを嗜んでいるタムラに、オゼは思い切って尋ねてみた。

「ええ、そうかなぁ・・・? 普通だと思うけど。」

「普通!!? あ、あ、あ、あれを普通とおっしゃるのですか・・・!?」

ズレた眼鏡を掛けなおし、顔を赤らめながら、オゼは1時間前の出来事を思い出す。


夕食にて。

「ほら、ルイス。いまフーフーしてあげる。ふーーふーー・・・」

タムラは、スプーンですくったコンソメスープを冷ましてやると、ルイスの口元へと持っていく。

しかし、ルイスは、

「たむらぁ・・・。ルイスね、ふーふーじゃなくて、ちゅーちゅーがいいの・・・///」

と、頬をピンク色に染め、上目遣いでタムラに訴えてきた。

「ふふ、ルイスは甘えん坊さんだなぁ・・・。」

そう言って、タムラはスプーンのスープを自分の口に含む。

そして、ルイスの唇に、自分の顔を近づけた。

「ルイス、ほら・・・」

タムラに促され、ルイスは自分の口をタムラの唇に近づけると、小鳥のように啄み始めた。

「んんっ・・・ちゅぷ、んぅぷ、ぺろ・・・こくん。はあ、タムラ・・・ちゅ・・・ちゅる・・・。」

一生懸命に、柔らかい舌と唇を動かすルイス。その姿を見てるうちに、タムラの心の内に、ちょっとしたいたずら心が芽生えてきた。

「ルイス、んっ・・・。」

ルイスの口の中に舌を入れ、ルイスの舌を撫で始めた。

「ふぅっ!?は、はふは・・・んふ、ちゅう・・・。」

ルイスは、最初は驚きこそしたが、嫌がりも抵抗もせず、タムラの舌を受け入れ、絡め始めた。

「れろぉ、んちゅう・・・じゅりゅ・・・ぷふぅ、タムラ・・・。」

「ん・・・ちゅう、ぷはあ。ルイスのお口、とっても美味しいね・・・。」

いつしか、ルイスの翡翠色の髪とタムラの銀髪が絡み合い、陶磁器のように白く美しい二人の肌は、ほんのりと赤み帯びていって――――

「・・・・・・・・・って、ちょっと待ったああああああ!!!」


結局、オゼが横やりを入れるまで、二人の「戯れ」は続いた。


「あれはさすがにやり過ぎです、お世話の域を超えています。・・・タムラ様?」

オゼは真剣な表情で訴えたが、タムラは首を傾げ、「なんで?」と言いたげな表情だ。


(天然か・・・!? 天然なのか・・・!?)

今年で齢30を迎えるオゼは、今までの人生でいろいろな人間に接してきた。

その中には、子供に欲情する下品で不潔な不届き者も何人かいたが、いま彼女の目の前にいる、澄んだ青い瞳を持つ青年は、そういった人種ではない・・・。それだけは、彼女もよく理解しているつもりだった。

とはいえ・・・

「はあ、この際ですから、ついでに申し上げておきたいのですが・・・。」

オゼは、再びズレた眼鏡を掛けなおした。

「ルイスをお風呂に入れて頂いたり、トイレの世話をして頂いたりするのは、すごく有難いことですが、その、・・・傍から見ていると、執拗に股を触っているような感じがして・・・。」


オゼの見解に対し、タムラは全く臆することもなく、

「ええ、そうかなあ?・・・ほら、ルイスは子供だし、自分のトイレの始末にまだ慣れてないから・・・。お股やお尻を汚したままだと不潔でしょ。」

「それはそうなのですが、世の中には幼気な子供に欲情する不届き者が・・・、あ。」

そこまで言いかけた途端、タムラの眉間にしわが寄った。

「むうううっ! 心外だなあ! 僕がルイスを傷つけるような真似、するわけないでしょ!?」

「そ、それはわかってますよ!・・・申し訳ありません、言葉が過ぎました。・・・いえ、そういうことではなくて、もう少し自重していただきたいのです。リュウトの領主は、幼女の口を吸い、股をまさぐる変質者だ、みたいなうわさが立ったら、貴族といえど手が後ろに回ってしまいます。」

「ルイスを外に出すつもりはないよ。そんな噂、立たないさ。」

「壁に耳あり・カーテンに目あり、と申します。どこで誰が見ているかわかりませんよ。・・・はあ、風呂にしろトイレにしろ、私がもう少しお役に立てられればよかったのですが。」

「ああ、そういえば、出来なかったんだよね。君が僕の代わりに、ルイスを風呂に入れようとしたときに・・・。」


タムラは、3人の生活が始まって間もないころの出来事を思い出した。

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