第7話 パラサイトストーン

「うわっ!?な、なんだ・・・これは!?」


脱衣場にて。

素裸になった女の子のお腹に埋め込まれた“異物”を目の当たりにし、タムラは思わず声を上げた。

「お腹に・・・石!?いや、宝石が・・・埋まっている!?」

エメラルドグリーンの、女の子のこぶしよりも少し小さい、イノシシの爪のように先が尖った石。ちょうど子宮の真上あたり―――へそと股の中間あたりに、それはあった。白く瑞々しい肌に、不自然に、まるで強い力でねじこんだかのように、めり込んでいる。

「痛くないのか?これはいったい?」

何時から付いているのか?と尋ねても、女の子は首をふるふると振るばかりで答えない。自分でもよくわかってないのだろうか。

「病気でしょうか? 何か先天的の・・・?」

「いや、見当がつかないな・・・。」

本人はあまり意に介していないようだが、肌本来の色質と相いれない、まったく無機質なモノが、周囲の血管を浮き出させながらギラギラと輝いている様は、はたから見ていてとても痛々しい。


(・・・ん? いや。ちょっとまてよ・・・!)

ふと、タムラは、自らの記憶の糸を手繰り始めた。

(この美しい緑色。それに、この特徴的な形。・・・“翡翠”を、“コ”の字型に削ってある。ということは!?)

タムラの推測が、確信に変わっていく。

(じゃあ、やっぱりアマテルスの・・・! そうだ、これは本来、アイツの御所に・・・!)

「・・・タムラ様?」

(・・・間違いない。となれば、陸軍のヤツらには絶対に・・・)

「タムラ様!」

「ああ、ごめん。ちょっと心当たりがあってね。」

タムラは、コホンとひとつ咳払いし、女の子の髪を撫で、やさしく梳く。

「大丈夫だ。君のことは僕が守ってあげる。・・・オゼ、さっきの話は無しだ。この子は託児所には預けない。うちで面倒をみる。」

「・・・ほう?」

「いや、もっと正確に言えば、君と僕以外の人間には、できるだけ、存在そのものを知らせないようにしたい。・・・特に」

タムラは語気を強めた。

「特に、リュウトに居る陸軍の連中には知らせてはならない。この子は、この屋敷に置く。僕がここで面倒を見るよ。」

「・・・。」

オゼは反論も驚きもせず、ただじっとタムラの話を聞いていた。

「・・・ダメかな?」

4,5秒の沈黙ののち、オゼは口を開いた。

「滅相もない。伯爵様の命令とあらば、それに従うのがメイドの務めというものです。タムラ様が以前陸軍にいらっしゃったという話は人伝で伺ってはおりますが・・・いえ、何か深い事情がおありなのでしょう。」

「うん。ありがとう、オゼ!・・・よかったね、君。これで安心だぞ。」

女の子のつぶらな瞳が、タムラのやさしい笑顔をとらえていた。

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