第2話 ネコ派の君
急に前を向いてしまった理沙を見て、藤川充は納得のいかない気持ちになった。
(変なこと言っちゃったかな。でも向こうからイヌ派かネコ派かって聞いてきたのに。ネコをカワイイって言った時はあんなにご機嫌で笑顔を向けてきたのに。ネコがそんなに好きなのか……?)
藤川にとって、コロコロと表情を変える理沙は、未知の生物のようだった。
(女は分からない)
藤川はこっそりため息をついた。
斜め前の席の西川理沙の周りには、いつも人がたくさんいる。男も、女も。
西川はそんなことは当たり前のように、皆が話していても突然ウトウトしたり、今日は外で食べたいとお弁当を持って教室を出て行ってしまったりする。
なんて自分勝手なんだと藤川は思うが、人は理沙を気ままで自由だといって、むしろ理沙の突拍子のない言動を楽しんでいるようだ。
理沙が人に愛されていることは分かるが、藤川は自分と理沙は全く違う人種だと思う。出来れば関わりたくないと思うのだが、理沙は何かと藤川に話しかけてくる。それなのに藤川が理沙の質問に答えると、突然ションボリして会話を勝手に打ち切ってしまったりするから、藤川は正直困ってしまう。
なぜなら藤川は安定した人間関係の中で生きてきたので、人が機嫌を損ねるときは、「なぜ」そうなったのか、ということはいつもハッキリしていて、原因が分からないなどということはなかった。
例えばいつもよりも友達がイライラしているような場合には、テストの点数が悪かったとか、サッカーの試合でシュートを外した、とか、ちゃんとした理由がある。原因と結果は、いつもキチンと結びついているものなのだ。
それなのに西川理沙の気分については、全く原因が分からず、いつも突然、結果だけを突きつけられるような気がする。
数学の授業が始まったので、藤川は理沙の事は頭から追い払った。難しい数字の世界に没頭する方が、答えの分からない事を考えるよりもずっといい。
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