悪夢

 毎晩、私は夢を見る。どんな夢かって聞かれると困ってしまうけど、とても怖い夢。

 苦しくて、辛くて、痛くて、切なくて、悲しくて、悔しくて。負の感情を全部くっつけて、それをまとめて押しつけられたような、そんな夢。


 誰かが叫んでいる。

 誰かが泣きわめいている。

 誰かが狂ったように笑っている。

 誰かが静かに怒っている。


 そこに秩序なんてものはなくて、混沌と、先も見えない真っ暗な闇が空間を支配している。

 光なんてみえない。色すらも見えない。全く同じ色の機械じみた黒だけが唯一の色。視界なんて当てにはならない。


 視界の自由がない中で、永遠に感じられる時間を、私は押し寄せてくる負の感情と共に過ごしている。

それは声となって、匂いとなって、感触になって、或いは心に直接。私を浸食してくる。


 私は悪夢に喰われている。

 体を、心を、存在を。

 喰われて。喰われて。空っぽになるまで喰われ続ける。


 怖い、なんて感情はもうどこかに消えた。

 ただ、毎晩毎晩少しずつ蝕まれてる。

 少しずつ、少しずつ。もったいぶるように。焦らすように。


 ふわふわした中で感じる痛みと、何かが入り込んでくる不快感。



 私は、悪夢に喰われてる。





 ――――そこで、目が覚めた。



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