帰りを待ってます。クッキーをかじりながら
「いつまで、縋ってるの」
簡単なラッピングをされた、クッキーを抱きしめてる私を見て、マミは呆れるように溜息を吐いた。
「あいつが帰ってくるまで」
「もう帰ってくるわけない」
「わかんないじゃん!」
「あの状況で生きてるって言うの?」
「わかんないじゃん……」
ぎゅ、とクッキーが粉々にならないように抱きしめる。
「あんたが置き去りにしたのによく言うよ」
「私はあいつを置き去りにしたくて置き去りにしたわけじゃない!」
「まあ、あたしもあれが正解だと思ってるけど」
世界は変わってしまった。
街は退廃し、化物が徘徊する世界になった。平和なんてものは、ただの幻想に成り果てた。
私たちは、そんな世界を生きている。
「あいつは弱いあんたを命がけで守ったんだよ」
「私がもう強ければ……」
「今更悔やんでも仕方ないでしょ。これからあいつの代わりに強くなれ」
「代わりとか言わないで」
私はマミの瞳を覗く。
「あいつは帰ってくるよ、きっと」
「まあ、信じるのは勝手だけどね」
マミは少しだけ口角をあげて、溜息を吐いた。
「でもそろそろクッキー食べないと、腐るよ」
「……そうだね」
私はあいつが作ってくれたクッキーをかじった。
*三題噺「縋る」「クッキー」「置き去り」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます