帰りを待ってます。クッキーをかじりながら

「いつまで、縋ってるの」


 簡単なラッピングをされた、クッキーを抱きしめてる私を見て、マミは呆れるように溜息を吐いた。


「あいつが帰ってくるまで」

「もう帰ってくるわけない」

「わかんないじゃん!」

「あの状況で生きてるって言うの?」

「わかんないじゃん……」


 ぎゅ、とクッキーが粉々にならないように抱きしめる。


「あんたが置き去りにしたのによく言うよ」

「私はあいつを置き去りにしたくて置き去りにしたわけじゃない!」

「まあ、あたしもあれが正解だと思ってるけど」


 世界は変わってしまった。

 街は退廃し、化物が徘徊する世界になった。平和なんてものは、ただの幻想に成り果てた。


 私たちは、そんな世界を生きている。


「あいつは弱いあんたを命がけで守ったんだよ」

「私がもう強ければ……」

「今更悔やんでも仕方ないでしょ。これからあいつの代わりに強くなれ」

「代わりとか言わないで」


 私はマミの瞳を覗く。


「あいつは帰ってくるよ、きっと」

「まあ、信じるのは勝手だけどね」


 マミは少しだけ口角をあげて、溜息を吐いた。


「でもそろそろクッキー食べないと、腐るよ」

「……そうだね」


 私はあいつが作ってくれたクッキーをかじった。




*三題噺「縋る」「クッキー」「置き去り」

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