メロンソーダにアイスを落とすまで。

 僕はあいつのことが嫌いだ。


「たいしたことはしてないよ」


 そう笑って、いろんな賞をかっさらっていくあいつが。


「君の方が才能あると思うよ」


 そう言って、多くの人に評価されるあいつが。


 僕は嫌いで、あいつといると劣等感しか感じない。


 あいつと仲良くクレヨンで絵を描いた日々は、とっくに思い出の彼方に消えた。


 だけどあいつは、いまだにそれを楽しそうに思い出す。


 呑気にメロンソーダを飲みながら。


 そして、


「やっぱり緑は君の色だねぇ」


 と訳のわからないことを言う。



 僕はあいつのことが嫌いだ。

 だから、メロンソーダにアイスを落とす。




*三題噺「メロンソーダ」「思い出」「劣等感」

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