蛍光灯が点滅する
一瞬、じじじ、と蛍光灯が揺れるように点滅した。
「君が死んでいたなんて知らなかったよ」
「うん、密葬だったからね」
じじじ、とまた蛍光灯が揺れるように点滅する。
君がしゃべるたびに、蛍光灯が点滅するのはやめてほしい。
「そっか。君はどうして死んだの?」
「……自殺」
じじじ、と蛍光灯が揺れるように点滅する。
目の前にいる幽霊になってしまった君の顔が少し歪んだ。歪んだ透けた顔の向こうで、デジタル時計が一つ数字を変えた。
「それで密葬だったの?」
「うん。世間体がどうとか」
じじじ、と蛍光灯が揺れるように点滅する。
彼女は不満そうに笑った。今まで見たことがないくらい変な笑顔だった。
「私は皆に来てほしかったんだけどなぁ。そして、泣いてほしかった」
じじじじ、と少しだけ激しく蛍光灯が揺れるように点滅した。
この蛍光灯はどうやら君の感情に引っ張られるようだ。
「それが本心?」
「うん。私がこの世にいてほしかった、死んでほしくなかった、って言ってほしかった」
「そっか」
僕の頬を涙が伝う。
「僕は君に生きててほしかったよ」
「君ならそう言ってくれると思って、君の所に来たんだ」
なんだそれ、そう言おうとした。
でも、君の姿はいつの間にか消えていて。
『ありがとう』
その言葉だけが、君の声で響いた。
じじじ、と蛍光灯が揺れるように点滅した。
*三題噺「密葬」「蛍光灯」「本心」
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