魔女は退屈が嫌いです。

 学校が終わって、家に帰宅したら、俺のベットで知らない女の子が漫画を読んでいた。


「あ、おかえり〜。お邪魔してまーす」


 満月の光を連想させる鮮やかな金髪の女の子が、漫画を見ながらそう言った。

 俺はいまいち状況が理解できなかった。


「……誰?」

「家出をしてきた、魔女でーす」

「……は?」


 ますます意味がわからない。


「なんで俺の部屋にいるの?」

「なんか丁度良さそうだったから」


 面白かった、と漫画を閉じると、女の子は俺の方を向いた。


「これからしばらくお世話になりまーす」

「は?」

「あ、大抵のことは魔法でなんとかなるから、住める場所だけ貸してくれればいいから」

「は?」


 若干上から目線な自称・魔女は、俺の戸惑いをにこにこしながら見てくる。


「……場所をどうこうよりもまず、詳しい説明をしてくれない?」

「詳しい説明?」

「家出をしてきた理由とか」

「そんなの決まってるじゃん。楽園がつまんないからでーす」

「楽園?」

「私の住んでるところ。人間の住んでる次元の一個上にあるところ」


 神様とか住んでるところねって、自称・魔女は笑うが、そんなの信じられるわけない。


「楽園って穏やかに時間が過ぎていくだけで、何にもないから、飽きちゃうの。漫画とかゲームとかある人間の世界の方がよっぽど面白いんだよ」


 はあ、とため息をつきながら、自称・魔女は違い漫画を手に取る。


「てか、本当にお前魔女なのか」

「正真正銘の本物でーす」

「でもとんがり帽子被ってないじゃないか」

「そんなの迷信!人間が勝手に生み出した魔女像でーす」

「じゃあ、黒猫の使い魔は?」

「それも迷信。私は猫アレルギーなので、犬派でーす」

「じゃあ、箒で空を飛ぶのは?」

「それも迷信。箒がそんなに頑丈な訳ないでしょ。てか君の魔女に対するイメージ、結構古いね」


 確かにそうかもしれない。最近の漫画とかでは、魔女はあまりとんがり帽子を被らないし、黒猫の使い魔もいないし、箒で空を飛ばないような気がする。


 最近、漫画で出てきた設定はどうだろうか、と半分面白がって、俺は聞くことにした。


「じゃあ、魔女が神様の子供っていうのは?」

「それは本当でーす」


 それは本当なんかーい。



 こうして、俺の部屋に楽園いえを出てきた魔女が居候することになったのだった。





*三題噺「神様」「迷信」「楽園」+「魔女」①


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