別の世界軸からこんにちは

 こたつから、見知らぬ少女が出てきた。

 ぼろぼろの衣服を身に纏っていたが、そんなことよりも手に持っている光線銃に僕は目を奪われた。


「……君は、誰?」

「動くなっ!」


 僕はその光線銃を向けられていた。ただ、光線銃を持つその手はぷるぷると震えていたし、声も可愛らしかったので、怖がる要素など何一つなかった。


「き、貴様は何処所属だっ!というか、ここは何処だ!」

「ここは地球だよ」

「ち、地球だと?!」


 彼女は目を大きく開けて驚き、光線銃をぽろりと地面に落とした。



 彼女の話を聞くと、どうやら彼女は別の世界軸の地球からやってきたみたいだ。そこでは、宇宙戦争が行われているという。

 他の勢力と比べて、圧倒的に力不足な地球人だが、星座の位置が変わっても、月が満ち欠けしなくなっても、なんとか生き残っているらしい。


 だが……。


「ついに火星人の奴らが、雨じゃなくて猛毒を降らせる雲を開発しやがった。これで地球は間違いなく滅びる」

「そっか、地球人は頑張って生き残ってたのか。そして、やっぱり火星人は対地球兵器を開発してたのか……」

「は?」


 僕が宇宙戦争について分かったようにいうもんだから、彼女は目をパチパチさせた。


「僕も、そっちの地球出身だから」

「え?」

「君と同じで、そのこたつからこっちの平和な地球に数年前に来たの」

「え、え?」

「あ、あと向こうの地球には戻れないからね」

「え、嘘?!」


 彼女は忙しく表情を変えながら、僕の話を聞いていた。


「帰れないってどういう事ですか!」


 今はショックを受けた顔をしていて彼女は叫ぶので、僕は少しだけ心が痛くなった。


「まだあの人に告白してないのに……」


 続いた言葉を聞いて、僕はどうでも良くなった。告白できないまま、死んでしまうなんてよくある話だった。


「まあさ、色々説明するからとりあえずこたつに入らなよ」


 そう言いながら、僕はこたつに入る。

 そんな僕を見て、彼女は恐る恐るこたつに入った。


 そして、2人でふぁと緩んだ顔をした。

 こたつに入るとすべてがどうでもよくなってしまう。


 もう戻れないであろう地球こきょうを思いながら、僕らはこたつで惰眠を貪った。




 *三題噺「宇宙」「雲」「こたつ」

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