世界戦争の学園

 私の手には、鮮血が滴り落ちるナイフが握られていた。


「よく、飽きないわね」


 呆れたように溜息を吐き、ナイフを振って血を払う。


 私の通う学園は、戦争が日常的に行われている。国と国の戦争が、学園に通う生徒たちによって繰り広げられている。


 目的は、ただひとつ。

 どんな歴史も、好きなように改変できる“ゆがんだかけら”を手に入れるためだ。そんな力を持つ代物を、易々と他国に渡す馬鹿はいないだろう。


 それこそが馬鹿な行為だと、なぜ気付かないのかしら、そう思う。


「やっほー」


 私に近づく、別国の少女がいた。名前はサリ。

 急に近づかれたので、私はサリにスカートの下から取り出した銃を向けていた。


「……びっくりするでしょ、クレア」

「私と貴女は敵同士ですが?」

「別にいいじゃん。こんなくだらない戦争、少しくらい中断したって、ばちは当たらないよ」

「それは、そうね」


 私は銃口を下ろす。


「なーんでこんな戦争してるんだろうねぇ。未来ある子供たちを使って」

「……美味しい品種のリンゴがあったとしても、熟れないと美味しくならないってのと同じよ」

「なるほどねぇ」


 熟れないとリンゴは美味しくない。

 才能も開花しないと使えない。


 だから、私たちは戦争をしている。


「大人の考えに理由なんて求めちゃ駄目よ」


 そして、私はサリに銃口を向ける。


「ええ、休憩終わり?」


 不満を言いながらも、サリも銃を私に向ける。


 一瞬の静寂。

 そして、発砲音。


 私たちは、戦争をしている。




 *三題噺「戦争」「リンゴ」「ゆがんだかけら」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る