閻魔様のひらめき

「我は決めたぞ!」

「どうされたのですか、閻魔様」


 ここは地獄。悪人たちが堕ちてくるこの世の最下層。

 その地獄を支配する閻魔は、偉そうな椅子に偉そうな服を着て偉そうに座っていた。


「我は地獄に、伝説の大学を創立するぞ!」

「伝説の、大学ですか?」


 配下の1人が、何を言ってるんだこの閻魔様はと言いたげに眉間に皺をよせた。


「ああ。ここは悪人が堕ちてくるところ。悪人たちを改心させるために、教育機関が必要じゃあないか」


 思いついた我、天才☆、と閻魔は誇らしげである。


「はあ、また幻でも見たんですか」

「幻とはなんだ!夢の中で、愛しのアテナちゃんと話し合って決めたんだぞ!」

「それが幻だと言ってるんです。地獄に大学なんて作れるはずないじゃないですか」

「できる!なんせ、我は地獄の支配者・閻魔なのだからな!」

「はあ……、もう好きにしてください」


 かくして、地獄に大学が創立された。

 地獄にまともに勉学をしたいものなどおらず、というかそもそも罪人たちは地獄で裁きを受けるのに忙しく、入学者希望などいなかった。

 創立されてわずか1日で閉校となったことで、閻魔の大学は伝説となったのだった。




*三題噺「地獄」「幻」「伝説の大学」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る