第10話逃亡中
ラッターに揺られる中、俺は自分がここに来た瞬間を思い出していた。
都心より離れた、ほどよくマックやTSUTAYAがある、街。
スマホのゲームをしながら、駅から長い家路を楽しんでいた。
デジタル技術は5Gからいつのまにやら7Gになっていた。
いつかはフルダイブのVR?ゲームが出ることを楽しみに小学生、中学生を過ごしていたが、高校生になった時に半ば諦めた。
ゲームのハードは次世代機が発表されるたびに値段が上がり、気づいたときには6桁を超え、学生で貰えるお年玉を全てつぎ込んでも、遙かに手の届かない存在になっていた。
ゲーム業界も格差社会に脅かされているのだろうか。
最早ゲームのハードはサラリーマンか、バイトを始めた大学生が苦心の末手に入れる物になっていた。
収入源のない、オレ達はスマホのゲームで満足することになった。
大人達は高価なハードゲーム機に夢中になった、半フルダイブのソフトは、狭苦しい現実の空間と違い、フルフェイスのヘルメットコンソールと脳は受信コネクトでコントロールが出来、視覚障害者などでさえ、楽しむことが出来た。
オレ達は、親たちがソファーに座り、ヘルメットの下からのぞくニヤけた口元をただ、漫然と眺めていた。
だがそんな中でも救いはあった、ネットの中でユーチューバーならぬ、ユーチューブゲームクリエイターなるものが現れた。以降ユーゲーターと呼ぼう。
フリーのデータ素材と7Gを使い、自分が作ったゲームを発信する人々だ。
オレ達ゲーム難民はそれに飛びついた。
既存のゲームソフトはもはや、少子高齢化時代に生まれた大人達に向けたソフトしか作っておらず、さらにその世代の僅かな子供達ユーザーに対してゲーム会社はハードソフトの劣化版や単純に画面を落としこむことしかしなくなっていた。
ゲーム会社としてみれば利益率の悪いユーザーなのだ。
ユーゲータの中でもトップのPVをほこるのが山本大和とチャンネル名大和製作所だ。
大和のゲームは一見面倒くさかった。
オートセーブ、難易度、課金制度などがなく単純なレベルを上げストーリーを進めるものだった。
だが俺たちはそれにドはまりした。
地道だが手ごたえのレベル上げやクエスト、随所に織り込まれたオリジナリティーとどこかアナログチックなギミックに終始学校で噂を読んだ。
誰かがクリアするたびに動画が上がった。
不思議なことに大和の作品には、どこか「頭を使え、技を磨け、出なければ一生クリアすることはできないぞ」と言わんばかりの趣向がしてあった。
ある作品の中のクエストについては、何週間も日本中が攻略できず、「ついに無理ゲート化した」などのつぶやきが流れたが、ある日、小学生の小さな女の子がクリアーしてしまったことがあった。
動画でアップされ日本中が「なるほど」と称賛と一緒に自分の頭の固さに苦笑いをしたもんだ。
山本の作品の面白さわそこにある。
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