第7話 最悪な未来しか見えない
「はぁ、どうしようか..」
俺は案外、異世界を舐めていたのかも知れない。
冒険者登録は漫画のようにすんなり行くと思っていたが、現実は厳しかった。確かにここに来るまでの街並みも綺麗だったし、法整備がしっかりしてるのだろう。
日本でも日雇い労働ですら、身元の確認くらいするだろう、異世界だから訳のわからない奴でも簡単に雇うだなんてあまりに愚かな考えだよな…
冒険者ギルドですら無理だったのだから、望みは薄いが、諦めずに他に雇ってくれる場所を探そう、それがダメならアデルの店で働かせてくれないか頼んでみるか..
もしも、それすらダメだったら、生活のため反社会的な裏の仕事をしていくのだろうか...潜伏やスティールは盗賊家業に向いていそうだ。
一体、この世界で俺はどんな人生を送るんだろうな..
はぁ...最悪な未来しか見えない...
ギルド前で項垂れていると、カレンが通りかかった。
「レイ..?こんなところで座り込んで何してるの?」
「冒険者として登録しに来たんでしょ?なら早く中に入りなさいよ。」
「いや、それがダメだったんだ..。」
「どういうこと?」
俺が事情を一通り話すと、カレンは片手で軽く頭を押さえながらバツが悪そうに言った。
「あー、多分あの件の影響でいろいろと厳しくなったんだわ..」
「間違ったことを言ってしまって、ごめんなさい..」
「いやいや、カレンは悪くないよ。」
「気にしなくても大丈夫。俺はあと少しだけここでこれからの作戦を考えてるだけだから!」
俺は心配を掛けないようになるべく元気に言った。
するとカレンは、
「全然大丈夫そうに見えないわ。ちょっと、待ってなさい。」
そう言い残したカレンは小走りで去っていった。
しばらくして戻ってきたカレンは、一枚の紙切れを掲げて俺に言った。
「薬草採取の仕事を受けてきたわ。」
「え?」
「あんたが依頼をこなしたら、私が替わりに報酬を持ってきてあげるから頑張んなさい。まあ潜伏持ちのあんたなら余裕だろうけど。」
「ありがたいけど、本当にいいの?もしバレたら規約違反とかで..」
「バレないように上手くやるわよ、私に出来ることはしてあげるって言ったでしょ?」
絶望し掛けていたが、少しだけ光が見えてきた。
「カレン...」
「ほら、ボサッとしてないでさっさと行ってきなさい、私も忙しいんだから。」
俺が感動していると、カレンは照れ臭そうに言った。
目先の目標を貰えたのは本当にありがたい...
だって何をしたらいいのかわからない時が一番精神的に辛いから。
それは俺が17年間、学校というレールの上で特に考えずに従ってきたが故だろう。
これで問題が解決するわけではないが、とりあえずはこのクエストをこなそう、それが気分転換になり、打開策や何か良いアイデアのきっかけになるかも知れない。
カレンにお礼を言って、俺はクエストに出かけた。
ーーー
依頼内容の薬草は、昨日のあの森で見覚えのあったものだった。確か、俺が倒れていたところの付近に生えていたはずだ。
なるべく良い品質の良いものを集めれば報酬額が上がるとのことだったので、ピーピングによって見える情報を頼りに、俺はなるべく品質の良いものを集めた。
「これで最後かな。」
森で薬草を採取し終わった俺は帰り道を歩く。
そういえば今日はなぜか、モンスターが多くなっている、帰りも潜伏で見つからないことを祈ろう。
そういえば、なぜ本来夜行性のガルデアがあんな昼間に暴れていたのだろうか?
街も慌ただしい雰囲気で警備も多かった気がする。ギルドの登録が厳重になっていたこともそうだし..。
俺はこの世界の常識や情勢を知らない。
生きていくためには知恵や知識が必要不可欠だ。
帰ったら、まずは情報収集だな。
そんなことを考えながら街に戻る途中...
根暗少年は異世界を闇属性で生き抜く Lasell @meigetsusora
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