第5話 危なかった...

俺たちは、ガルデアのいる、街へと繋がる道中を歩いていた。



潜伏は成功しているみたいで、ガルデアは近くを通る俺たちに気づく素振りも見せていない。


良かった。

一時は心配だったが、これなら楽に街に帰れそうだ。



俺がそんなことを思ったからだろうか。



(((ブオォォオ!!)))


「誰か、誰か助けてくれーー!!」



突如、ガルデアの唸るような雄叫びと、人の悲鳴が聞こえた。

誰かがガルデアに追いかけられているのか..。


俺はカレンに尋ねた。


「誰か追われてるみたいだ!どうする??」


「心苦しいけど、今はどうしようもないわ。無視して行くわよ。」


辛辣だが仕方ないか..


悲鳴が聞こえる中、俺たちは歩みを進める。


「誰か、誰かーー!!」

より緊迫感を増した引き千切れんばかりの悲鳴が聞こえる。


「ごめん、カレンはここに隠れてて」


「ちょ、レイ!!待ちなさいよ!!」


カレンの制止も聞かず、俺は飛び出していた。

何を考えているのだろう。


ああ多分、もう二度と誰かが無残に見捨てられる光景を見たくなかったんだろうな。


ごめんカレン...もし失敗したら俺が囮になってる間に逃げてくれ。



小石でもぶつけてガルデアの気を引いた後、彼と共に潜伏して逃げ出せばいいだろう。


ガルデアのいる方向に、走りながら念のためピーピングする。



文字化けしていて読み取れない情報が多い…、俺のレベルが足りないからだろうか。

しかし、レベルと体力で勝てない事は歴然だ…


カレンも言っていたが、勝てないのは確実だ。


やはり、戦わずに済ませるしかない。



いよいよ、ガルデアに追い詰められ殺されそうになっている中年風の男


「誰か、助けてくれぇ!!ま、まだ死ぬわけにはいかないんだ!!」


俺はガルデアに向かって大きめの石を投げつけながら叫んだ。


「おい!!!」


(((ブォルゥゥ??)))


「こっちだよ!!マヌケ!!」

罵声と共にもう一発石を投げた。

走る準備をしておく。


想定通りに、ガルデアは振り返り俺の方へ襲ってくる。


俺はギリギリで潜伏し、避けるため全力で走った。


「危なかった...予想以上に早かったな..」


ガルデアはそのまま俺のいた方向へ走って行って、木にぶつかって、またツノを引っ掛けている。


デカくてパワーはありそうだが、意外と単純な獣だ。


その隙に倒れている男に駆け寄り解放する。


「おっさん、大丈夫か?」

「あ、あんた、助けてくれるか?」


「そのために来た。」

「あ、ありがとう、もうダメかと思ったよ...。」


おっさんは力が抜けるようにホッと息を吐く。


随分ひどい怪我だ。


((ダーク))「ヒール」


念のため、ダークは心で唱え、ヒールだけ口に出して言った。

男の傷は見る見る内に治っていく。


「き、傷が!すごいな、あんた、ありがとう!」


「今から潜伏魔法で実を隠す。俺に触れている間はおっさんも安全だから、絶対に離すなよ?」


「回復魔法につづいて、そんなすごい魔法まで..。わ、わかった、言う通りにするよ。」


ツノの絡まりをほどいたガルデアがいよいよ、襲ってくる。


急いで男に、俺の腕を掴ませ、潜伏をアタッチメントする。


全力で走る。


気配が消えている事を願いながら、先ほどカレンといた場所へ急いだ。


その場所には、ちゃんとカレンがいた。俺を見捨てて逃げても良かったのに…。



戻ってきた俺の姿を見たカレンは、ほっとしたような顔をした。


そしてカレンにも潜伏を施すと、その顔は怒りを込めた膨れた顔になり...


「もう!いきなり飛び出すから心配したじゃない!!」


「し、バカ!!気付かれるだろ!?」


俺は、とっさにカレンの口を手で押さえ込み、ガルデアのいる方向を見ると、幸い、今の声に気づいている様子はないようだ。


「大丈夫だったか...そういえば気配そのものを消してくれるんだったな..。」


口封じを解かれたカレンは再び怒り出す。


「バカはあんたよ!」


「突然勝手に飛び出して、どれだけ心配したと思ってるの?」


「ご、ごめん!無断で行って心配かけたのは謝る!でも、ほら!こうして無事に帰ってきたんだからいいだろ?」


膨れた顔でそっぽを向くカレン。


まだ怒ってるみたいだけど、一応、許してはくれたみたいだ。




潜伏によって無事に森を抜け出し、俺たちは街に着いた。

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