間章:万魔の檻を一人見下ろして
☆
夜空には連続して花火が上がっていた。現実だけで今七万人を収容しているこの会場は、仮想端末でVRとリンクすると何千万人もの人間が同時接続した未曾有の真の姿を見ることができる。
アリーナに迫り出したレストランからは今は、雪と金色の煌めきを含んだスモークが眼下に立ちこめ、会場の現状をまともに見ることはかなわなかったが、沸き立つ熱は伝わってくる。
「——どんなことだって最初があって、最後がある。だけど終わりも始まりもルールではなく選択だ。ピースの欠けた隙間がなくなったのなら、目の前にあるパズルをプレイヤーは終えることができるが。本当は完成などしていなくても、いつだってゲームは終わりにできる」
肺の空気が吐き出す端から震動になる。
叩きつけるような歓声、その音が伝播して会場全体から空気が震撼させられていた。心躍るビリビリとした感じがいよいよ明瞭な形になってくる。
目を閉じても肌で感じられた。始まるのを。
「けど現実では、選ぶのは誰か一人だけじゃない。この世界とは全人類の無意識な選択によって形作られた——万魔の檻であるのだから。
俺が全てを用意した。終わりになんてさせないために。たとえ何がどうなろうと俺は、俺の決めた以外の結論を認めない。生まれつきそういう風にできてるんだ。変えることのできない運命なら必ず、思った通りにならないといけないだろ——?」
別れ際、レストランのドアが閉まるとしばらくの間暁遊生はそこにいたが、自分が見られていたことを彼女は知らなかっただろう。焦らすような速度で下降していくエレベーターの中で、外のことは意識から消えていただろうから、自分以外の誰が何をしているか想像すらしていない。今もするはずがない。だが、もしもこれから何が起こるか真実を全て知っていたら、どうしただろうと少々考えた。
「……まァ? 今日はこれから嫌でも……俺に付き合って貰うけどな!」
三——
二——
一——否、結果はきっと変わらない。
途端に歓声の爆発が起こった。
会場では、七万人が待ち焦がれたオープニングライブが遂に開幕を迎えようとしているが。
「思えば、この瞬間のために。あの日、始まったゲームのスタートを今にするために俺は頑張った。それが唯一約束を守る方法だから。今はもう……いなくなってしまった友達との。これは負けられないゲームなんだ。なら俺は、必ず勝つ方法を選ぶ。いつだって、このやり方があってるんだ——」
【続く】
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