第8話 ノリと勢いとそして100%希釈の勢い

さて、翌日宿泊費を支払ったところでこの街を去る。それにしても異世界来てそうそう死んで負債まで抱えるとは。されど思ったよりも安かった。なんと100均価格。そう!ワンコイン×100。尚、貨幣単位はわからない模様。債権者の魔女さん曰くさほど高くないので代わりに私が払うとのこと。その先には隠れたメッセージがあったが。


それからありがたい神(悪女(ハルさん))から借りているお金ショッピングを楽しむことにした。余分にお金を貸してくれるなんて神(悪女(ハルさん))だなー。あれ?なんか鋭い視線を感じるぜ☆壁に耳あり障子に目あり空に龍ありってか?・・・本当にあいつら何してんだろ。


何となく人の流れに沿ってきたら見せ屋街にやってきた。まぁなんだ、商店街みたいなもんだ。あれの露店版。常設の屋台通りみたいな感じ。ここには日用品から魔術具から色々なものを取りそろえているようで大繁盛していた。ただし相も変わらず売り手も買い手もマッチョマンだらけだ。恐らくこの街には、食べたら筋肉がつく食材が流通しているのだろう。そう思わないと少し気持ち悪い。


見せ屋街の端部に位置する少し薄気味悪い色をした天幕に目を奪われた。ブラックボックスを目の前におあずけをくらっている気分だった。現実でブラックボックスなんて見た事ないけどな。入ったら絶対に面倒なことになる、そんなことは火を見るより明らかである。しかし、好奇心に勝るものはなく次の瞬間にはそこに入っていた。


中はどういう仕組みか外見以上に広かった。そしてそこには様々な植物が売られていた。そのほぼ全て未知のものであった。あっ、現実世界でもこういう店行ったらほとんど未知のものだわ。てへペロペロ。どこからか嘔吐えずく音が聞こえたような・・・壁に耳あ(ry


様々な植物を見ていく中でどうやら食べられそうなものも売られており、この世界に来た、いや来る前か?神とのやり取りを思い出した。あの時の僕は今のような、よく分からん魔女と神出鬼没な優しそうな商人野郎とに挟まれる生活を望んでいただろうか。あの頃はそう、農業をやろうとしていたではないか!なぜそんな大事なことを忘れてしまったんだ!Hey店長!この種買った!


その他、プランター、肥料、ジョウロ等々最低限の用品を購入した。自給自足の生活に今から胸が躍る。しかし、移動式耕作地などは売っているのだろうか?もしくは土の要らないプランターか?それにしてもノリと勢いとそして100%希釈の勢いだけで買ったので、これらが一体なんなのか全く無知なままである。まぁ、あの人たちに聞けば何かわかるか。


会計を済ませると対応してくれた店員が最近入荷したという希少種の食人植物を見せてくれた。丁度、食人植物の餌やり時間らしく食われている人がいた。正直グロイ。と思ったら一緒に来た店員さんがテッテレーと言ってお決まりの看板を持っていた。


「びっくりしすぎてぎっくり腰になってポックリ逝くかと思ったわ!」


「失敬、失敬。水でも飲んで落ち着いてください」


「ありがとう。うん?なんか飲みにくいな。…ってこれ徳利やないかい!」


「うっかりしとったわ。おや?じっくり見るとそっくりやな」


「それはがっくりやわ。っていつまっでつつけるねん!もうたっぷりだわ」


「「どーっも有難うございました」」


この速攻芸に周囲のおきゃっくさんもびっくり。拍手喝采。実際一切合切打ち合わせなしでこれだ。えっ?もう韻踏むなって?うっさい。

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