第7話 ふむ、どうやら魔女でも法には逆らえないようだ。

翌朝、痛む足を引きずり、この間魔女っ子とあった場所に行く。その前に一つ気がついたことがあるのだ。ホテルに入る前泊数を聞かれていないということに!普通のホテルは事前に聞いてくる気がするのだが・・・。色々いとこのホテルはぶっ飛んでいる。今日こそ、恥じらいを捨て受付嬢に尋ねてみようか。


エレベーター 人が乗ってきた 気まずいな

  by込 壮


今日は受付前に人が多くいた。大繁盛。大賑わい!いや、大騒ぎや!どうやら頭上の翼竜が落ちてきたらしい。不幸中の幸いと言おうか、けが人は誰一人としていなかった。だが、外はお通夜モード。喪にふくしている人もいるくらいだ。そんなに大事な役目なのか、こいつ。まぁ、いいや。今日はそんなこと気にしている場合ではないんだなー、これが。大事な人との待ち合わせ(一方的)。遅れていくわけには行かないぜ。


この街に来た時同様、96歩歩いて後ろを向いたら彼の洞窟前に着いた。そこには魔女っ娘が座っていた。


「おかえり、ライラ君。それとはじめまして」


魔女っ娘は何かに微笑みかけた。僕にはではなく、僕の後ろにいる何かに…。恐る恐る後ろを見る。そこには例の店主がいた。


「やあやあお二人さん。少年とはこれで三回目か?まあ何はともあれ、お嬢さんは初めましてだよね?私はアジェリスに住む者だ。以後お見知りおきを」


「ライラ君をだしにしてここまで来たのですか?」


「ええ、この少年とはちゃんと契約を結んでいますからご安心を」


魔女っ娘(名前を忘れた)はこちらを見てくる。ジト目で。一言申したい。僕は決したこいつをここに連れて来ることを条件にしたわけではないと。魔女っ娘はやれやれといった感じで店主野郎に向き直った。


「それで、あなたの望みは?ここまで来るくらいだから、何かあるんでしょ?」


「まあね。なぁに、簡単な話さ。私は洋服屋を経営していてね。お嬢さんの髪の毛を少々頂きたくてね」


「なるほど。でも残念ね。乙女の髪の毛を命に相当するのよ。それにアジェリスの承認には売りたくないわね。それはあなたもよくご存じで」


「あくまで拒否…ですか。こうなることも想定内。申し訳ないのですが私、手段を問わない性質なので」


完全に置いてけぼりだ。てか、僕もう用ないですよね?帰っていいですか?えっ、報酬なくすって?すいません。まだいます。それにしても手に汗握る展開になってきたな。僕はただの傍観者としてここで座って居よう。あ〜アリだ〜。つんつん。


「おい、少年そいつやばいぞ・・・。噛まれると死ぬ・・・」


えっ?


「ライラ・・・くん?息してる〜?」


完全に煽られた。この発言で完全に魔女っ子は悪役に転向した。ただ、まだ噛まれていないので慌てる必要はない。落ち着いて、潰す。先手必勝!


「因みに潰すと毒の霧を発生させるぞ・・・って、手遅れか」


一方は僕のことを心配してくれている?しかし、もう一方はゲラゲラ笑っている。決定!そこの魔女っ子は悪女とします。


「さて、お嬢さん。この空間はもう間もなく毒ガスに覆われます。その前に髪の毛を頂けないでしょうか?」


「それは脅迫かしら?あらやだ」


悪女は体をくねくねさせている。正直キャライメージが歪み始めたよ。もっと可愛いキャラだと思っていたのに…。僕の友達は潰れ、毒ガスを撒いているアリだけだ。


〖スキル取得〗


【指圧 壱】

相手を攻撃力の30%/gで押しつぶすことが出来る。発動時、生命力-10


【毒耐性 壱】

毒に少し強くなる。(2%軽減)


ふむ、新しいスキルを覚えたようだ。この世界、矢張りゲームに近いな。簡単にスキルを習得できる。特に毒体制は普通に強い。それでも徐々に目が回り始めてきた。恐らく生命力がなくなりそうなのだろう。どちらか助けてくださいません?


「だーかーらー、髪の毛は渡せないって言ってるでしょ!しつこいな。警察呼びますよ?」


「呼べるのならどうぞ。私は頂くまで帰りませんから」


ちょ、ちょ、死にかけの人の前で痴話げんかはおやめください。と、心の中で思っていたら喧嘩の矛先がこちらに向いた。ねえ、人の心読むのやめない?てか、読めるならたすけて。


無事回復していただきました。それと空間解毒をしまして、澄み切った美味しい空気を吸えるようになりました。いやー魔女っ娘さんいい人!えーと、名前忘れたのって?い、いやーあはは…。は、ハルさんね。はいはい、覚えてましたよ?それで、今夜はもう遅いから泊っていけって?有難うございます。でもこの人は?


「あの悪徳商人なら転送魔法でお家で寝かせてやったよ」


あ、うん。強すぎるなー。


「それよりも、ライラ君のせいで私ここにいられなくなっちゃった〜。どう、責任とってくれるのかな〜」


その理由がわからず首をかしげていると、


「アジェリスで見かけなかった?MHIとかいう、宗教団体。あれ、魔女狩りを推奨してる団体なのよね」


魔女狩り。よくあるやつ。魔女が人を虐殺しているから制裁を与えるやつ。彼女が本当に、本当の魔女なら確かにまずいな。先の店主がここの場所を完璧に覚えていたら…。その先の展開を考えたら申し訳なくなった。ワー、アリダ。ブチっ。ジュワー。毒ガスを充満させてやった。魔女っ娘改め、ハルさんは驚きの表情…ではなく、呆れた表情をしていた。あれ?これで場が和むかなって思ったんだけど…。自分でも何がしたかったのかわかんないや。取り敢えず、空間解毒してもらった。実際、スキルの強化を狙ってたんだけど、簡単には上がらないみたいだ。


「ライラ君って、控えめに言ってあほ?」


うっ、直球。心に来るものがある。


「まあ、そんなことはどうでもいいや。で、ライラ君は今後どうするの?アジェリスに帰ってもいいし、私と一緒についてくるのも…」


え…そういうの大丈夫です。僕はぼっ…一匹狼なんで!とはいえ、向こうに帰ったところで宿泊費を払わなければならないからな。このまま街をでて…は無理だな。指名手配されて人生終了。


「帰ったとして例の商人からやっかみを受けるかもね」


つまりは一緒に行動しろと。確かに罪悪感は否めない。まあ、こんなに可愛いやつと一緒に過ごせるというなら悪くないよね~。そうしようか。


「うん?聞こえないな~」


くっ、こいつ。


「え、えーと、今回は僕のせいでご、ご迷惑をおかけしたので…。あのー、一緒にいいですか?」


「えー、どうしようかなー?……。まあ先ずは、宿泊代払ってきなさい!」


ふむ、どうやら魔女でも法には逆らえないようだ。







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