第4話 いや、普通に人差し指だよ?
────翌日────
「ライラくんにこれを授けてしんぜよう」
と言ってハルさんは1冊の手帳をくれた。表紙に何やら書いてあったが、うん、読めない!どうやらこっちの文字で書かれており、理解不能だった。こういうのって普通翻訳されてるもんじゃね?と内心ボヤきつつ、ありがたく受けとった。ここにスケジュールを纏めればいいのだに。……。んなことはなかった。通行手形だってさ。入国する際に提示しなければいかないらしい。空港でパスポートを見せる感覚だ。てかそれと同値。中を見るよう促されたので、確認してみる。そこにはいつの間にやら撮られたのか証明写真が貼られていた。いや、目付き悪!びっくりした。こんなに睥睨されたことは今までに一度もないよ。
ハルさん曰く、この森をぬけた先に
アジェリスへ入るための関所前には長蛇の列ができていた。しかし、そこには所謂亜人とやばれる人達はいなかった。いや、見た目はね?筋骨隆々な人はごまんといるけどただのマッチョにしか見えん。やはりここは魔女っ子だけ(スライムも?)だけが生息するほぼ平々凡々な世界なのかもしれない。そう思っていた時期が僕にもありました。
何とか関所を通りぬた僕はアジェリスの内地を見て度肝を抜かれた。一見ただのレンガ造りな現界で言うところの西洋風な街並み──異世界では定番になりつつある街風景なのだが、頭上を見上げれば大型の翼竜が空を謳歌していた。やはりここは異世界だ!しかし、街中を歩いているのは背丈こそ一様でないものの筋骨隆々な男しか歩いていないのには疑問符を打たずにはいられなかった。「?」
何となくホテルっぽいのを見つけた。ネオンが点灯していたので勝手にそう判断したのだがな。受付で指を1本立てたら驚かれた。いや、普通に人差し指だよ?きっとこの世界では人差し指は良くないのかもしれない。
借りた部屋は、明らかに一般人が借りれる部屋ではないほど広かった。冗談抜きで25Mプール×2は余裕で入りそうだ。もちろん横に二つ並べるんだぞ!誰もそこを問題に思ってない。内装も凝られれており鹿の頭部の剥製らしきものが飾られており、なおかつ床には毛皮の絨毯が引かれていた。これってきっといいやつだよね?僕が世間知らずで一般家庭にも置いているような代物だってことは…ないですね。知ってます。これは完全に部屋を間違えたようだ。お得意様用の部屋だな。うん。……。どうしよう?
ま、まあとりあえず一息つこう。かと言ってソファー等に座ろうもんなら約束手形を貰うことになるだろうから、陰気らしく壁に背を預け、改めてシャンデリアの光の元で持ち物の整理をしよう。と言っても、中に入ってるのは1冊の本だけだった。その本は今の僕にとって非常にに役に立つものだった。その本は「異世界語入門 ~15ヶ国語に対応 読むだけで簡単に習得!~」と題されていた。胡散臭さの塊だ!幸運の壺レベルで怪しいぞ。創刊号初回は300円!全うん十巻。結局うん万円使ってましたってパターンだぞこれ。
中身は至って普通だった?…。ごめん、前言撤回でオナシャス。言語名と使用地域しか書かれていなかった。やはり金目当てか。そんなのだから、言語ページは僅か15ページだけだった。残りの数百ページは各言語の歴史が記されていた。生憎僕は歴史書が好きでは無いので、そっとバックの中に返しておく。することが無くなり今一度部屋を眺める。やはり広すぎる。なんか落ち着かないな。庶民には合わない。やはり部屋を替えてもらおうか。しばらく逡巡した末、意を決して立ち向かうことにした。
こちらの世界にもエレベーターみたいな物があり、高い所へ行くのにはこれを使うのだが、そこで居合わせた利用者が興味深い話をしてくれた。まぁ、僕は適当に相槌をうつだけだったんだけどね。その人(マッチョ男)曰く、今日このホテルにWHIという宗教団体の教祖がプライベートで聞いているらしい。この、WHIがどう言った宗教団体なのか説明されなかった。僕には尋ねる勇気はなかった。とりあずお嬢(受付嬢)が、鋭い眼光で睨まれたと泣いていたそうだ。可哀想に。流石の僕ですら人を泣かせたことは無いというのに、一体どこのどいつが美麗な女性を!
ロビー階でおり、受付に向かう。向かおうと思ったが勢い余って外に出てしまった。本当だよ?決して、相談するの躊躇ったわけじゃないからな!たまたま足が止まらなかっただけだ。踵を返しまた中に入ろうと思ったが、それは不審でしかないので街中に繰り出してみる。相変わらず空には翼竜が群がっているのだが、あいつらは何か意味があるのか?
街に出てきて幾つかわかったことがある。一つ目はあの本の信憑性は高いこと。街中の看板の文字が読めるようになっている。のみならず、街ゆく人の話し声も分かる。が故に僕の悪口も聞こえてくる。
「ママ、ママあのおじさんみて!へんなふくきてるよ!おもしろいよ」
「あまりジロジロ見てはいけませんよ。世の中いい人ばかりでは無いのだから」
全て聞こえてます。はい。この街ではスライムは忌み嫌われているようだ。そして僕も嫌われてしまったようだ。さよなら。取り敢えず服を買わなければと思った今日この頃。とは言え、服屋に行っても門前払いじゃの、これ。詰んだ!えっどうしよう。
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