第71話 わかるわよ
コンちゃんと劇的な再開をして、数時間ほどが経ったがいまだに驚きが身体から抜けることがなかった。 コンちゃんがカルディと共に行動していることがあり得なかった。
今この場には、アリシアさん、アオイ、私の三人がいる。 と言うより、私たちが泊まっていた宿に戻って来ただけだけど。 そこから、私たちは何が起きていたかの話し合いをしている。
「たぶん、操られていると思う。 あのバカは」
アリシアさんがそう言った。 私もその意見には賛成だけど、身体言うことを聞いてくれない。 『天照』を使った影響で一日寝込むことになっている。 もちろん、口も動かないからしゃべることも出来ない。 コンちゃんのように『念話』が出来れば楽だけど、コンちゃんはあれを魔術と言っていたから私には扱えないものだ。
「そう言えば、ロゼ。 あなた、あの魔法は何かしら?」
アオイとの話が終わったようで、ベットで寝ている私の方を向いてアリシアさんはそう言った。 コンちゃんの前では、口から音は出ていたけど、今は音すら出ていない。 口を動かそうとしても動かない。 自分の身体が自分のものではなくなったように。
「あなた、身体が動かないのね。 それなら仕方ないわね」
アリシアさんはそう言うと、私の目を指さした。
「じゃあ、はいなら瞬きを二回、いいえなら瞬きを一回しなさい」
私は分かったと瞬きを二回した。 そうすると、アリシアさんは「よろしい」と満足げに頷いた。 それからしばらく、アリシアさんの質問に瞬きで返すという奇妙なことを行なっていた。
♦
「なるほどね。 あの、いきなり膨れ上がった魔力はロゼの魔力で、その魔力で
あらかたアオイに聞いていたと思うけど、私に本当かどうかの確認を取ったアリシアさんは少し考えていた。
「決めた。 ロゼが動けるようになったらすぐにあいつのいるとこに行くわよ」
それはいいけど、アリシアさんはコンちゃんがいるところわかるのだろうかな?
「アリシアさん。 師匠のいるとこわかるんですか?」
私が思っていたことをアオイが言ってくれた。
「わかるわよ。 本当なら私とグレンだけで戦いに行くはずだったから」
わかっているならよかったけど、コンちゃんと二人だけで行こうとしていたのは初めて知った。 仲間はずれにされていたからいい気分ではないけど。
ただ、私たちを危険な目に合わせたくないと思っての事だともわかっているから余計に悔しい。 まだ、コンちゃんの隣に立つことができないのかと。
「でも、事情が変わった。 ロゼ、動けるようになったらすぐにあいつのいる魔王のところまで行くわよ」
アリシアさんがそう言った。 私は声が出せないから瞬きを二回で返答した。
このときは、この話を聞いている者がいたなんて思ってもいなかったけど。
♦
『天照』使用から丸一日が経った。 私は動けるようにもなったし、声を出せるようにもなった。
それから一時間後、王都の前――私とアオイが
「何であんたたちもいるのよ」
アオイが目の前に立っている女性に向かってそう言った。
「いえ、蒼とロゼさんが『剣姫』アリシア様とどこかに向かわれるようでしたので」
フフフ、とどこかの貴族の令嬢を彷彿させる笑みを浮かべるユイがいた。 その奥にはムスッとした表情を浮かべているユウキ様がいた。
「へぇ~、盗み聞きしていたのね、結衣」
「アリシア様から同行の許可は得ていますので」
「アリシアさん……」
アオイはうなだれてしまった。 ユイさんはうなだれたアオイを無視して私の方に歩み寄って来た。 ユイさんはとても笑顔だった。 だが、それが怖い。
「ロゼさん、巨魔獣兵器の討伐お疲れさまでした」
「結衣、そんな奴に言わなくていい」
「祐樹、ロゼさんにそんな奴なんて言うものではありませんよ」
「そいつの使い魔が裏切ったんだぜ? そいつもいつ裏切るかわかったもんじゃないぜ」
ユウキ様の言葉に思わずビクッとしてしまった。 そこにアオイとユイさんの擁護が入る。
「師匠は裏切ってない。 絶対に」
「あの狐さんはわけがあって裏切らないといけない立場にあったのでは?」
ユウキ様も二人が私の擁護に入るとは思わなかったのかそれ以降何もいう事はなかった。 でも、私の事を嫌っているのだけは分かっていた。
原因はたぶんだけど、最初にあったときと、ミルドさんのところでアオイと遺書に戦って負けたからだと思うけど、嫌いですと露骨に態度に出されるとものすごく困る。 ユウキ様もミルドさんのところにいた時にアリシアさんに稽古をつけられているところを何度か見ている。 コンちゃんはアリシアさんが仕方なくやってると言っていたけど、アリシアさんに稽古をしてもらっていたおかげか前と比べようのないほどに成長していた。 ユイさんはコンちゃんと私に回復魔法について教えていた。 コンちゃんも私も焔魔法の回復だけだったから、本当に教えるだけになっていたけど、少しだけ攻撃系統の魔法も覚えていた。
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