第70話『天照・破滅熱風』

私たちの目の前には、大量の巨魔獣兵器ベヒモスがいる。 一体だけでもキツいのにそれが数十体にも及ぶ数の巨魔獣兵器が鎮座している。 全身の身の毛がよだつほどの恐怖を覚える。


「アオイ、私の魔力全部使って、あの大軍を倒すから」


 決定事項を淡々と言った私に驚き、目を見開いて私を見てくる。 それを私はニヒッと笑って見せた。 精一杯の強がりをする子供のように……。

 だけど、アオイはそれだけで、安心したように胸をなでおろした。


「何秒いる?」

「大丈夫、これは今からでも十分間に合う」


 そう言って、巨魔獣兵器へと一歩前へ進んだ。 そして、私の魔力が一気に膨れ上がった。 それは、あたり一帯の地形を変えてしまいそうなほどの力を持った魔力だった。 これほどの魔力を私は持っていない。 巨魔獣兵器に三分の一ほど魔力を使ったけど、元々ある魔力でもこれほどの威力は出ない。 この魔力の半分は樹精霊ドライアドから流れ込んでくる魔力。 樹精霊からは『あまり取り過ぎないでよね』と念話で伝えられた。 


「行くよ、これが私の本気!焔魔法『天照アマテラス』」


 そう唱え切ったとき、一気に膨れ上がった魔力が私を中心として一点に収束していき、そして、その力を一気に解放した。 周囲には暴風として襲った。 フードの女性はフードをおさえながら耐えていた。 アオイは、いつの間にか岩の壁を作っていた。


「これが私の本気」


 コンちゃんからは、巫女服に羽衣をつけた天女みたいだなと笑われながら戦って負けた。

 それでも、私が使える最強の固有魔法オリジナルであることには変わりない。 それに、相手はこの魔法を知らない。 コンちゃんも最初はこの魔法で翻弄していた。

 巨魔獣兵器たちは、暴風が収まり、巻き上げられた砂埃が晴れると私に向かって一斉に超電磁砲レールガンを放つ体制に入った。 数十体同時の超電磁砲を受けられないと思われていること自体が心外だ。


『ブモォォォ!!』


 電磁砲による一斉攻撃を私は片手を向け、止まれと念じた。 すると、超電磁砲が勢いを止め、空中に霧散していった。 これは、天照の力である。


「すごぉ!」

「天照の力だよ」


 『天照』の能力は熱の空間支配。 今、私はこの一帯の熱を支配している。 熱を発するもののすべてを支配下に置いている。 超電磁砲も熱を放っていた、だから、超電磁砲を支配下において消した。 それでも、代償は大きい。 一分間だけ『天照』を使える。 

 一分を過ぎると『天照』の使用による魔力切れを起こして一日中寝込むことになるけど、一分のあれば倒せると思う。


「行くよ」


 私は巨魔獣兵器の群れに笑いかけるように笑い、自分自身に『天照』の熱支配の力を使って、肉体を最大限強化して突っ込んでいく。 一つ、『天照』の弱点を一つ上げるとするなら、生き物に対してはその生き物に触れなければ『天照』の力を使うことはできない。 だから、こうして私は巨魔獣兵器に近づこうとしているわけなのだ。 

 私は、一体一体触れていく、触れるだけで巨魔獣兵器は凍って動かなくなる。

 仲間が私に触れられるだけで次々と凍っていくのを見て、他の巨魔獣兵器は散り散りに逃げていく。 ここまでで三十秒、もう他の巨魔獣兵器を置ている時間はもうない。

 だから、私はここで一気に決める。 


「『天照・破滅熱風ローカナ』」


 すべてを燃やしつく熱風があたりに吹き荒れる。 それでも、周りの自然は燃えておらず、アオイも燃えていない。 燃えているのは巨魔獣兵器だけ、おかしいのはフードの女性がなぜか燃えていない事だろう。


『ブモォォォ!!!』


 巨魔獣兵器たちの断末魔があたりに響く。 炭すら残らずここに巨魔獣兵器がいたという証拠すらなかった。 でも、それ以上に驚くことがあった。 

 『天照・破滅熱風』の風でフードの女性のフードが取れていた。 その正体は、コンちゃんだった。


「コンちゃん!」


 なぜ、燃えなかったのかもわかった。 私は味方が燃えることのないようにしていたから燃えなかったのだ。 それでもおかしい。 コンちゃんがなぜ向こう側にいるかだけど、コンちゃんの目には何も映っていない様に見える。 何かに操られているように思える。

 ここで、『天照』が使える一分が過ぎた。 私はコンちゃんのところに向かおうとして、私は倒れた。 一日中寝込むことになるけど、意識はある。 だから私はコンちゃんを見上げながら声をかけようとするけど、私の口から出てくる言葉は「あ~、え、く」などと言った意味のない言葉しか出てこない。

 そこに、突然カルディが現れた。 たぶんだけど、テレポート短距離転移だと思う。 その証拠に、少し遅れる形で強化魔術を限界近くまで使ったアリシアさんが来た。


「逃げ足が速いわね!? グレン、どうしてあんたがそこに?」

「さぁ姫様、目的は失敗しましたが目的は達成できました。 帰りましょう、我らの女王のもとに」


 カルディの言葉に小さくうなずいたコンちゃんはカルディが開いた|転移門《

ゲート》をくぐっていく。 

 アリシアさんはそれを阻止しようとするがカルディによる妨害でコンちゃんがくぐることを許してしまった。 カルディは、最後にお辞儀をして消えていった。

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