第67話 どうしてだろうね
どうしてこうなったのだろうか、そう考えそうになってやめる。 私の視線の先には『賢者』グレンの姿をしたカルディと国王の二人が並び立っていた。 そして、私の目の前には斬首台、両脇には剣を帯刀した近衛騎士団の人がいる。
「どうしてだろうね」
アリシアさんはここにはいない。 私は内密に処刑されると言っていた。 魔王に魂を売った裏切り者として処刑される。 ことの始まりは三日前からだった。
♦︎
「到着しました、ここがナコナリ王国です」
ナコナリ王国はミルギア王国が滅んだ跡地に出来た国であり、ミルギアの王族の子孫が王になっているためコンちゃんは毛嫌いしていた。 あの話を聞いた後だと納得してしまうけど。
「ロゼ様は五日後に王城に登城してもらいます」
「わかりました」
前に王都に来たときのように大通りで下ろしてもらい、前は見ることが出来なかった王都の探索をアオイとすることにした。
「ロゼ、蒼、王都を見終えたらここに集合しなさいよ」
「師匠は来ないんですか?」
「私は少し宮廷内で何が起きているのかを探ってみるわ」
アオイの言葉にそう言ったアリシアさんは王城に向かって歩いて行った。
私とアオイはアリシアさんが見えなくなると、「どこに行こうか」とあれやこれやと相談していた。
それから、話がまとまると私たちは王都名物の料理を片手に持ってゆっくりと探索を始めた。
日も傾きだした頃に、私たちは大通りに帰って来た。 そこにはすでにアリシアさんが帰ってきていたが、アリシアさんは私たちでも近づきにくい雰囲気を出していた。 そのアリシアさんに恐る恐る近づいて声をかけた。
「アリシアさん」
「あぁ、帰って来たのね、て、どうしたのそんな生身で虎に出会ったような弱腰は」
「アリシアさんが怖い顔をしていたから」
「そのことね、ここじゃ話せないから宿に行こう」
ここでは話せない事って何ですかと、聞こうとしたけどアリシアさんは足早と先に行ってしまった。 私たちはその後をついて行くしかできなかった。
「ここよ」
そう言われた場所は、王族御用達の隠れ家に利用されていると噂される宿だった。 この噂は、今日ここの目の前を通った時に小耳にはさんだ程度のものだけど。
「ここなら秘匿性の高い話もできるわ」
そう言ってアリシアさんは宿の中に入っていった。 アリシアさんについて宿の中に入った。 入ってすぐに目を引くのは大きなシャンデリアだった。
そのすごさに驚いている私たちを見ることもなくアリシアさんは受付をして部屋に向かおうとしていた。
「何してるのあんたたち、行くわよ」
その声で我に返った私たちは慌ててアリシアさんについて行った。
♦
部屋について出迎えてくれたのはふかふかのベッドだった。
私とアオイはベッドに身体を埋めながらアリシアさんの話を聞くことにした。
「まず、何故ロゼが召喚されるのは分からなかった」
「は、はぁ」
「これは、情報屋に頼んでと、私自身が王のもとに言って聞いたことね。 情報屋も信頼できるような奴だけどこっちに聞いても無理だった。 正直お手上げよ」
実際に手を挙げる動作をしたアリシアさんを見ながら、私は枕を抱えて仰向けになった。 ただ、仰向けになって少し呼ばれた理由を考えていた。
♦
三日後、私は突然近衛騎士を捕まえた。
そして、現在に至る。 アオイは、私の近くにたまたまいたから、アリシアさんを呼びに行ってもらっている。 アリシアさんが間に合うか、間に合わないか、それが私が死ぬか死なないかの瀬戸際になっている。
まず、カルディがここにいる理由を考えよう。
カルディは、コンちゃんを何かに利用しようとしていた。 逆にコンちゃんはそれを利用とした。 でも、上手くいかなかった。 それで、カルディは目的が達せられたから私を殺そうとしているというわけかな? 私が思いつく限りは。
「罪人ロゼ、面をあげよ」
カルディの声が聞こえる。 あげる気の顔を騎士が持っている槍で無理矢理あげさせられた。
「何故、我らを裏切った」
そう言ったのは王様、王様に似合いそうな厳つい顔をしたおっさん。
「裏切ってなんかない。 私は『剣姫』アリシア様と一緒にいる、それでどう裏切るの?」
「それは真か」
王が食らいついた。 内心でガッツポーズをした。
「騙されてはなりません。 あのものが魔物と共に行動しているところを私は見ました」
「コンちゃんは私の使い魔だよ!」
そう叫んだ私を騎士は押さえつける。 王は私の言葉を聞いて少し考える仕草をした。 そして、こう言った。
「罪人ロゼを即刻死刑にせよ」
私は騎士に抱えられ斬首台に固定された。 王が片腕を挙げたのを見て、密かに笑うカルディが目に入った。 私の腕につけられた、封魔の鎖のせいで魔法が使えない。 だから、アリシアさんが来るのをただ祈った。 そして、やれと命令される寸前に声が響いた。
「待った!!」
上空からアリシアさんと抱えられたアオイが降ってきた。
「ごめん、ロゼ。 遅くなった」
アオイはそう笑いかけてきた。
「ううん、大丈夫」
私もそう笑いかけた。
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