第68話 させると思う?

 斬首台はアリシアさんの手でバラバラにされて私は解放された。 私の近くにいた騎士の人は突然現れた『剣姫』の姿を見て驚いていた。 突然現れたことと英雄が来たことに驚いてるようだった。


「ほんとにグレンにそっくりね」

「というか、グレンさんの身体ですから」


 アリシアさんがそう呟き、私が捕捉した。

 アリシアさんからは知ってると言わんばかりの視線をもらった。

 国王は目の前の状況を飲み込み切れていないようで困惑していた。 カルディはアリシアさんの登場に苦虫を噛み潰したような顔になった。


「『剣姫』アリシア……?」

「久しぶりね、アレクシア。 ちょうど一年ぐらいかしら?」


 アレクシア王ーーこの国の王様ーーがそう困惑した声で言ったことを聞き取ったアリシアは優艶に笑いかけた。


「その者が言っていたことは本当なのだな。 どうなっている?」


 私を見ながらそう言ったアレクシア王は、カルディにそう言った。

 カルディは大きくため息をつくと笑みを作った。


「あと少しだった。 我らの姫様を完璧にするにはお前の死が必要だった。 お前が死なぬのなら、作戦を変えるしかないだろう」

「させると思う?」


 カルディが身を翻し、転移門ゲートを開いた。 それをアリシアさんが切り裂きそう言った。

 ただ、転移門を切り裂かれたカルディは初めからそれを知っていたかのように落ち着いていた。


「私を相手にしている余裕はあるのかな?」

「は? 何を言って!? ロゼ、蒼! 正門に行って!」


 カルディがそう言ったのを聞いて、アリシアさんは魔力感知を限界にまで広げ、慌ててそう言った。

 それを聞いた私たちはそれに従い正門へと向かう。


♦︎


 正門に着いた私たちを待っていたのは巨魔獣兵器ベヒモスと女性のような身体つきの人だった。 何故、女性のようなかと言われるとフードを被り口元しか見えず、女性のように見えたから。

 フードを被った女性とは、元から知り合いのような気持ちが湧くがまずは巨魔獣兵器の相手が先決だ。

 フードを被った女性は右腕を前に突き出してきた。 私とアオイは魔法かと身構えたがそれは巨魔獣兵器への指示だった。


『ブモォォ!!』


 大きな雄叫びをあげた巨魔獣兵器の角に魔力が溜まってゆくのを感じた。


「アオイ!」

「わかってる!」


 私たちの後ろには王都がある。 だから、逃げられない。

 私が土の壁を四枚作り出し、それをアオイが魔術で強化した。

 巨魔獣兵器も魔力を溜めきり、それを解放した。

 巨魔獣兵器最強の技、電磁砲レールガン。 それが、私たちの作った壁に激突した。

 激突した衝撃で飛ばされそうになるけど耐える。 巨魔獣兵器の後ろにいるフードを被った女性は何もないかのようにしていた。


「マズい! ロゼ!」


 電磁砲で土の壁が三枚破られた。 アオイは慌てているようだけど、私はすごく冷静だった。 コンちゃんが近くにいるようで。

 新たに土の壁を二枚作り出し、アオイの手を握った。


「私も一緒にやる。 アオイに合わせるからお願い」

「わかった」


 私はアオイの魔術発動に合わせて魔力を乗せた。 それは、先程までの壁とは比べ物にならないほどの強度を誇っていた。

 四枚目の壁が破られ、新たに作った壁に電磁砲が当たり、一枚目は破られ二枚目で止まった。


「止まった。 よかった、アオイ」

「うん、そうね、ロゼ」


 そう短く言葉を交わし、巨魔獣兵器を見据える。

 もう一度、電磁砲が来れば同じ方法で防がなければならない。 それは、私たちが圧倒的に不利だ。 だから、私たちに意識が向いている今なら、巨魔獣兵器の攻撃を王都ではなく私たちに向かって打ってくれるはずだ。 そう考え、私たちはそれぞれの得物を持ち、左右に展開した。 私たちの目論見通りに巨魔獣兵器は私の方へ向いた。 私は、狙いを絞られないように素早い動きで電磁砲が来ないようにした。 その背後でアオイが魔術で身体を強化して、巨魔獣兵器に斬りかかった。


『ブモォォォ!!』


 巨魔獣兵器は、斬られた苦痛の声をあげた。 そして、巨魔獣兵器はアオイに向き直した。

 そこに、「ピィーー!」と指笛がなった。 フードを被った女性だ。 巨魔獣兵器は、ジャンプをして、その女性の近くまで行った。


「諦めて帰ってくれたらいいのに」


 そう呟き、私は相手の出方を伺った。


『ブモォォォ!!!』


 巨魔獣兵器は、角を空に向け電磁砲を放った。

 私とアオイは、空を見上げ電磁砲を目で追った。 電磁砲は、空でパッと砕け落雷として降ってきた。


「嘘でしょ!?」


 落雷といっても、避けられる程度の早さだからそこまで怖くないが数が多い。 

 私が、一つの落雷を避けた時、右腕にジュッと焼ける音と焼ける痛さを感じた。 それに合わせるかのように身体が重くなった。 チラリとフードを被った女性の方を見ると女性の周りに黒い火の玉が浮いていた。 あれが私を焼いたことは明白だった。

 

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