第61話 静かですね

 どこからか作戦が漏れていたのかもしれない。

 

「どうする、二人の死体は」


 そう聞いてきたのは『獣王』アゼルだった。

 アゼルは悲しんでいないということではなく、このまま置いておくとアンデットにされて利用される可能性があるということを聞いているのだ。


「二人の死体は持ち帰れない。 ここで火葬するしかないかもしれないな」

「それがいいでしょうね。 この二人はここで殺され、目立つところにいた。 何もされていないはずがないですから」


 今回ばかりはモリアーティガの意見に賛成だ。

 俺たちのことが知られている前提になってしまったが、それでも引くことはできない。


♦︎


 俺たちは魔王城の中を駆けていた。

 魔王城の中には敵がかなりの数いると思っていたが、ここまでくるのに敵には一体足りとも出会うことがなかった。


「静かですね」

「あぁ、静かすぎて不気味だけどな」


 そうテツとゼアルが言い合っていたが魔王城の広間に出てくると突然探知魔法が反応した。


「チッ、ここで敵かよ」


 それでも俺たちは足を止める気はなかった。

 それは俺たちが仲間を信頼しているからだ。


「ここから先には行かせないよ!」

「通してもらうよ」


 一体の魔族の言葉に俺はそう言って俺たちは真っ直ぐに突き抜けるルートで走っていく。

 もちろん魔族の凶刃が襲ってくるがそれを見ることもなく真っ直ぐ走り続ける。


「お前ら! ここは任せた!」


 後ろを振り返ることもせずに魔族の一撃を受け止めているであろう俺とアリシア以外の白金プラチナランクに向けてそう言った。

 あいつらは白金ランク、俺たちと変わらないほどの力を持つ奴らだから幹部クラスの魔族にも引けを取らないはず。


「グレンさん、大丈夫ですかね。 あの人たち……」

「テツ、あいつらの心配するぐらいなら自分の心配をしてろ、あいつらよりもお前のほうが弱いんだからな」


 テツは心配そうに後ろを振り返っているが俺はあいつらが生き残れると信じている。


「そろそろ着くぞ、気を引き締めろよ」


 俺たちの目の前に巨大な扉が見えてきたときに俺はそう言った。

 俺はその扉を無理矢理開けて中に入った。

 中にいたのは二足歩行で歩く大きなトカゲのようだった。


♦︎

狐火キュウより


しばらくの間新作を書くため休みます。

五月からまた書き始めます

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