第60話 嘘だろだろ……?

 あれから半年が経った。 

 この半年で多くの出来事があった。 

 一つは、ミルギアのとある貴族が破滅したことだろう。

 その貴族は大量の亜人の奴隷を違法に持っていた。 そのための裁きが下ったと言われている。

 ただ、ひとつだけ言うのであれば、その亜人奴隷の中にミオの兄であるアルカがいたとだけ言っておこう。

 まぁ、他のことは語る必要のない話である。

 勇者が召喚されたという噂はつい先ほど、この国の王から正式に発表があった。

 

「さて、次は俺たちの出番かな」


 そう口ずさんだ俺の隣ではタツたちと

白金プラチナランクの面々が顔を合わせていた。


「白金ランクの皆さん、集まってもらってありがとうございます」

「グレンさんの頼みであれば全員集まりますよ」


 そう言ったのは、獣王のアゼル。

 ここには今いる白金ランクである七人の中のとある二人を除いた全員が集まっている。

 獣王、聖者、軍師、賢者、剣姫の五人、軍師の名はモリアーティガという名で片眼鏡をした初老だ。

 まぁ、年齢的に言えば俺とアリシアと同じぐらいの歳であることは間違い無いのだが、いかんせん食えないやつであった。

 このモリアーティガの二つ名である『軍師』とあるように人を率いることに特化した白金ランクの冒険者である。


「さて、今日集まってもらったのは魔王討伐についてだ。 全員知っていると思うが、魔王が本格的に動き出した」


 集まった全員の顔を見ながら俺はそう言った。

 今ここにいる全員が生きて帰れるかどうかなんてわからないそんな戦いをしようとしているのだから。


「まず、今回の作戦はモリアーティガが立ててくれた作戦で行く。 ここにいない『暗殺者』『拳聖』は魔王の偵察に向かってくれている。 先方の偵察のおかげで魔王の居場所は分かっている。 そこに、俺の転移で移動して現地で二人と合流する流れで行く」

「一つ、いいかなグレン」

「何だモリアーティガ」

「この作戦は先に相手の大元を叩いてその後、生き残りを潰すそういう作戦です。 なので、魔王を倒した後もよろしくお願いしますよ」

 

 そう言ったモリアーティガの言葉で少し全員のモチベーションが上がったような気がする。


「それじゃあ、転移するぞ」


 部屋にいた全員を転移で魔王城近くまで転移させた。

 近くで魔族と人間の怒号が飛び交う声がしている。

 それは、俺たちを魔王城に入れるために犠牲になってくれると志願してくれた人たちと魔族が戦っている証拠だった。


「テツ、振り返るなよ。 アイツらは俺たちのために戦ってんじゃねえ、自分のために戦ってんだから、水を差すようなことをしようとすんなよ」

「分かってます……」


 テツは自身の唇を噛みしめすぎて血が出ているのにも気づくことなく前を向いた。


♦︎


魔王城に着いた俺たちの目の前に飛び込んできたのはありえないものだった。


「嘘だろ……?」


 それは、誰が言ったことか分からなかったが、それほど信じられることが出来ないものだった。



 それは、十字架に貼り付けなされた『暗殺者』と『拳聖』だったのだから。


〜狐火キュウより〜


 4月から更新再開するということを言っておきながらなかなか更新できていなかったため、なるべく早く更新するべきだと思い短くても更新しようと思い更新しました。

 また、今週末にももう一話更新予定です。

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